夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫) 作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/04/11メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 152回この商品を含むブログ (529件) を見る 米澤 結局、いまの子供たちは――まあ自分たちの世代ですけど――、こうなりたいという情熱が仮にないとしても、では自分にはいったい何ができるのだろうかというスキルへの懐疑は持っている。そのスキルへの懐疑を無視すると、俺は大物なんだというわけのわからない全能感に走ってしまい、ふらふらと時間を浪費して、遠くない未来に自分が何者でもないことに気付くというオチになってしまう。その背景にはもちろん、何者にもならなくてもご飯は食べてられるという現実もあるでしょう。一方でそうならなかった人は、自分の全能感をトライアルしないといけない。そのトライアルを経て自分のスキルの限界を見極める過程をミステ
『氷菓』に始まる古典部シリーズの短編集であり、古典部入部から間もない時期から、翌年の春までの1年あまりを時系列に従って描いた作品集。 『やるべきことなら手短に』『大罪を犯す』『正体見たり』『心あたりある者は』『あきましておめでとう』『手作りチョコレート事件』『遠まわりする雛』の7編が収録。 「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」という「省エネ」を信条に掲げる主人公の奉太郎が、高校で入部した古典部で千反田えるというお嬢様に出会ったことで、不本意ながらも面倒ごとの解決に乗り出す…という、物語の基本構造は本編とほぼ同様です。ですが、本作では(間には、『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』事件を経て)千反田の「気になります」というひと言でもって奔走させられる奉太郎自身の複雑な変化が、青春ミステリの体裁を借りて克明に描かれています。 ミステリ的には、
雲上四季 - 米澤穂信の話|青春ミステリの条件と古典部シリーズを読んで思いついたこと。 米澤穂信の小説に登場する探偵役は謎に勝って女に負ける。 どういうことか。 まず、基本的に米澤作品の探偵役は謎解きに失敗しないということ。『愚者のエンドロール (角川文庫)』の途中経過をみるとちょっと微妙だけど、あくまでも「基本的に」なので目くじらを立てないでほしい。探偵役は提示された謎を楽々とクリアしている。 で、探偵役の自意識は肥大し、全能感に酔いしれ、かなりアレな状態になっているところを、ヒロインまたは準ヒロインの女性にガツンとやられてへなへなになってしまう。これが米澤作品における「探偵の敗北」だ。 もちろん、この構図にあてはまらない作品もある。たとえば、「Do you love me?」とか「11人のサト」とか。どちらも主人公は女性だし、後者はミステリですらない*1。だが、例外にこだわっていては先
青春ミステリの条件とは何か? それは探偵の敗北にあるのではないかと思います。 以下、探偵の敗北について考えつつ、青春ミステリの旗手・米澤穂信の最新刊『遠まわりする雛』を見てみたいと思います。 遠まわりする雛 作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/10メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 148回この商品を含むブログ (251件) を見る 2種類の青春小説 まずは青春小説に関してから始めましょう。 秋山が思うに、世には大きく分けて2種類の青春小説があります。甘いだけのものと、ほろ苦さを含むものです。 個人的な主観ではありますが、青春小説でしばしば描かれる思春期という年代は、非常に気持ちの悪いもののように思います。11歳から17歳ぐらいまでの間、ひとは声変わりや第二次性徴によって肉体的に大きく成長します。変質、もしくは変容と言ってもいいかもしれません。この時期に
古典部シリーズ四作目。古典部の四人の一年間を短編で追いながら語ったもので、過去三作の長編もまた過ぎ去る時間の流れに組み込まれている。作者の青春の描き方を個人的にあまり信頼していなかったのだが、本書はそのような心配を見事に払拭する出色の青春小説ぶり。ミステリ要素はストーリーに美しく組み込まれており、作品集として文句の無い完成度であろう。 古典部シリーズはそうでもなかったのだが、『さよなら妖精』『ボトルネック』や小市民シリーズを読む中で僕は、米澤の青春の描き方について疑問を持っていた。米澤作品特有のひねた主人公から語られる青春はその移り変わりを描写していくというよりは、予め痛みや破壊が到来することを織り込んだ、展開ありきの作り物という印象が強かったからである。ただ『ボトルネック』に対して小市民シリーズでは二作目での転換により、急展開を予定調和とせず受け入れて次作以降で変化させていくという気概が
傑作。とはいえこれも最近讀了した有栖川氏の最新作「女王国の城」と同様、閉鎖状況でジャカスカ人が死んでいくところはどうにもノれず、何度も溜息をつきながら讀み進めていったのですけど、主人公のどうにも冴えないボーイが探偵となって推理を開陳してからの展開が素晴らしすぎます。 高額の譯ありバイトにつられて集まった連中が、その名も暗鬼館なんてミステリマニアの心をくすぐる名前の館の地下室に押し込められて殺人ゲームを敢行、というトンデモな物語で、それぞれの個室のおもちゃ箱に入っているメモにはさりげなく名作のタイトルが添えられていたり、マニアにはお馴染みの「十戒」も見せてと本格原理主義者に對して「どうです?どうです?」とアピールしてみせる風格に、何だか米澤らしくないなア、なんて感じて讀み進めていくと最後にはスッカリ騙されてしまいます。 とはいえ自分は、このおもちゃ箱のメモに添えられている名作のあることや、或
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