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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (38)

  • 「ミスを罰する」より効果的にミスを減らす『失敗ゼロからの脱却』

    ミスや失敗をなくすため、ヒューマンエラーに厳罰を下すとどうなるか? 一つの事例が、2001年に起きた旅客機のニアミス事故だ。羽田発のJAL907便と、韓国発のJAL958便が駿河湾上空でニアミスを起こしたもの。幸いにも死者は無かったものの、多数の重軽傷者が出ており、一歩間違えれば航空史上最悪の結果を招いた可能性もあった。 事故の原因は航空管制官による「便名の言い間違い」にあるとし、指示をした管制官と訓練生の2名が刑事事件に問われることになる。裁判は最高裁まで行われ、最終的には2名とも有罪となり、失職する。判決文にこうある。 そもそも、被告人両名が航空管制官として緊張感をもって、意識を集中して仕事をしていれば、起こり得なかった事態である [Wikipedia:日航空機駿河湾上空ニアミス事故] より 芳賀繁『失敗ゼロからの脱却』は、これに異を唱える。 事故は単一の人間のミスにより発生するので

    「ミスを罰する」より効果的にミスを減らす『失敗ゼロからの脱却』
  • 死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』

    面会にやってきた母親を、息子はハグしようとする。母親は身をすくませるため、息子はハグを諦めて、少し離れる。すると母親は悲しげに言う「もうお母さんのことを愛してくれなくなったの?」 母親が帰った後、息子は暴れ出したので、保護室へ収容される。 グレゴリー・ベイトソンは、統合失調症の息子ではなく、母親の言動に注目する。息子のことを愛していると言う一方で、息子からの愛情を身振りで拒絶する。さらに、息子からの愛が無いとして非難する。 息子は混乱するだろう。ハグしようとする愛情表現を拒絶するばかりでなく、そもそもハグそのものが「無かったこと」として扱われる。にも関わらず、息子のことを愛していると述べる……そんな母親に近づけばよいのか、離れればよいのか、分からなくなる。 矛盾するメッセージに挟まれる ベイトソンは、この状況をダブルバインドと名づける。会話による言葉のメッセージと、身振りやしぐさ、声の調子

    死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』
  • 苦しくて辛いとき寄り添ってくれる一冊『絶望名言』

    普通、名言集といったら人を励ますものだ。 明けない夜は無いとか、出口のないトンネルは無いとか、あきらめずに頑張ればいつか夢はかなうとか。ポジティブにさせ、前を向かせてくれる言葉が並んでいる。エナドリのように気分をブーストさせるのに向いているが、ちょっと眩しすぎる。 当に辛く苦しく落ち込んでいるときに、「ポジティブでいれば幸せしかない」なんて言われても、「せやな」としか返せない。後ろ向きのときに前向きの言葉は似合わない。失恋ソングなんてまさにそれで、悲しいときには悲しい曲を聴きたくなるものだ。 それと同様に、辛いとき、苦しいとき、自信を失って途方に暮れているときは、絶望的な言葉の方が心に沁みる。自分だけではなかったと慰められ、この気分に寄り添ってくれているように感じられる。 カフカ、ドストエフスキー、太宰治、芥川龍之介など、文豪たちが吐き出す絶望名言を紹介したのがこれである。 紹介する人は

    苦しくて辛いとき寄り添ってくれる一冊『絶望名言』
  • 『独学大全』はこう使う

    独学の達人である読書猿が書いた、独学の百科事典。「読書猿って誰?」という人がいたら、[読書猿Classic]を見に行くべし。 787ページ、1kgは、ほぼ鈍器で、そこらの教養芸人を蹴散らすのにピッタリ。 だが、隅々まで読むのは時間がかかる。独学する人は何らかの「学びたいこと」を抱えており、それにまつわる様々な問題を解決したいが故に書を手にするのだから、全読している時間が惜しいかもしれぬ。 そんな人のために書の使い方を紹介するとともに、『独学大全』が、私をどのように変えたか、さらに、どのように使っていくかを書く。 『独学大全』で最初に読むところ 『独学大全』でどう変わるか 『独学大全』をこう使う 1. 『独学大全』で最初に読むところ もちろん始めから読むのが一番だが、てっとり早く掴みたい、という方のために、p.33~39に「書の構成と取説」がある。この6ページを読むだけで使い方が分かる

    『独学大全』はこう使う
  • 1冊の単語帳を610日かけて全読したら語彙力が1万語になった

    きっかけは、読書猿さんとの飲み会だった。 「海外の記事やSNSを読むのに英語力が足りない。しゃべれなくても書けなくてもいいけど、スラスラ読めるようになりたい」と愚痴ったところ、「まず2万語」と言われたのが最初だ。 語彙力こそパワー、ボキャブラリーを増やすぞとばかりに選んだのがこれだ。 理由は、英語を学んできた人たちの評価がダントツだったことが一つ。もう一つは、お試しで手にしてみたところ、「ちょっと難しいけれど、頑張れば読めないこともない」というレベルだった点だ。 書を610日間かけて読み切った結果はこうなる。Preply のボキャブラリーテストによると、ほぼ一万語に到達できた。 7870 words (2021年4月) 9944 words (2023年4月) ぶっちゃけ私一人では無理だった。初志は継続せず、どこかで挫折する理由を探し出していた。 だが、私を一人にしない技法を用いることで

    1冊の単語帳を610日かけて全読したら語彙力が1万語になった
  • 10品を美味しく作れるようになれば、100品だってできる『10品を繰り返し作りましょう』

    私は「野菜炒め」がヘタだ。 レシピを見ないレパートリーが沢山ある。クックドゥに頼らずとも、冷蔵庫のありあわせでそれらしい何か作れる。自分のための一皿を手早く作ったり、家族のためのごちそうを丁寧に作ることができる。料理はできるほうだと思っている。 だが、野菜炒めが上手にできない。 だいたい冷蔵庫の残り物―――半分だけ残った人参とか、中途半端なキャベツとか、ちょっとしなびたほうれん草と豚コマ―――を適当に炒めるのだが、これが上手くできない。べちゃっと水っぽくなる。 もちろん、素材の大きさを切りそろえたり、火の通りを考えて投入しているが、安定しない。上手くいくときも(たまに)あるけれど、中華屋さんの野菜炒めにはならない。youtubeの料理指南を見ると、デカい中華鍋+強い火力でねじ伏せているけれど、我が家にそんなものはない。 やっぱり道具かな、と思っていたが、ウー・ウェンさんのこので、目が開い

    10品を美味しく作れるようになれば、100品だってできる『10品を繰り返し作りましょう』
  • この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    「いつか読もう」はいつまでも読まない。 「あとで読む」は後で読まない。 積読をこじらせ、「積読も読書のうち」と開き直るのも虚しい。人生は有限であり、が読める時間は、残りの人生よりもっと少ない。「いつか」「そのうち」と言ってるうちに人生が暮れる。 だから「いま」読む。 10分でいい、1ページだっていい。できないなら、「そういう出会いだった」というだけだ。「いま」読まないなら、「いつか」「そのうち」もない。 に限らず情報が多すぎるとか、まとまった時間が取れないとか、疲れて集中できないとごまかすのは止めろ。新刊を「新しい」というだけの理由で読むな。積読は悪ではないが、自分への嘘であることを自覚せよ。「いま」読むためにどうしたらいいか考えろ。「」にこだわらず読まずに済む方法(レジュメ、論文、Audible)を探せ。難解&長大なら分割してルーティン化しろ。こちとら遊びで読書してるんだから、仕事

    この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』

    夢中にさせて寝かせてくれず、ドキドキハラハラ手に汗握らせ、呼吸を忘れるほど爆笑させ、ページを繰るのが怖いほど緊張感MAXにさせ、いしばった歯から血の味がするぐらい怒りを煽り、思い出すたびに胸が詰まり涙を流させ、叫びながらガッツポーズのために立ち上がるほどスカッとさせ、驚きのあまり手からが転げ落ちるような傑作がこれだ。 この世でいちばん面白い小説は『モンテ・クリスト伯』で確定だが、この世でいちばん面白いファンタジーは『氷と炎の歌』になる。 書いた人は、ジョージ・R・R・マーティン。稀代のSF作家であり、売れっ子のテレビプロデューサー&脚家であり、名作アンソロジーを編む優れた編集者でもある。 短篇・長編ともに、恐ろしくリーダビリティが高く、主な文学賞だけでも、世界幻想文学大賞(1989)、ヒューゴー賞(1975、1980)、ネビュラ賞(1980、1986)、ローカス賞(1976、1978

    ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』
  • 一生ものの痛みとなる読後感『帰りたい/Home Fire』

    最後の頁を読んだとき、頭に入ってこなかった。 何が起こったのか、一読して分からなかった(分かりたくなかった)。 ありえない、嘘であってほしいと願い、読み直す。目に力を入れて、一字一句を読み直すことで、この悲劇を免れる別の解釈が得られるかもしれないと願う。 しかし、いくら読んでも変わらない。どんなに読んでもラストは変わらないことに気づいた時、ざっくりと胸が抉られていた。 この痛みは一生もの。 悲劇は沢山読んできたが、これは苦しい。人並み以上に耐性はあり、たいていの物語は飲み込めるが、これはダメだ、辛い、辛すぎる。毒が血液にのって隅々にまで行き渡るように、苦しみが全身を這いまわる。この作品から被った痛みは、最高レベルになる。 これは、イギリスのムスリムの家族の物語だ。 「ムスリム」とはイスラム教徒のこと。イギリスでムスリムとして生きる人々は、およそ300万人、総人口の5%になる。豚やアルコー

    一生ものの痛みとなる読後感『帰りたい/Home Fire』
  • 炎上プロジェクトの火消し術『プロジェクトのトラブル解決大全』

    飛び交う怒号、やまない電話、不夜城と化した会議室。 集められたホワイトボードが衝立のように立ち並び、全員が立って仕事をしている(座る間が無いから)。週をまたぐとメンバーの疲弊が目に見えはじめ、月を跨げば一人二人といなくなり、仕事場はお通夜となる。 トラブルの無いプロジェクトは存在しない。炎上するかボヤで済むかの違いなだけで、大なり小なりトラブルは付きものである。 自分が所属する部署は大丈夫かもしれない。だが、隣のブースだとか、同期がいるチームで炎上しているのを横目で見ながら仕事する、なんてことがある。ホワイトボードは目につくし、大きな声はイヤでも耳に入ってくるので、プロジェクト炎上⇒鎮火するパターンなんてものも、なんとなく伝わってくる。 消火作業のイロハとか、怒った客をあしらう方法、リカバリ計画の立て方なんてのも、肌感覚で分かってくる。 そして、トラブルの扱いが分かってくる頃には、「応援

    炎上プロジェクトの火消し術『プロジェクトのトラブル解決大全』
  • 『君の名は。』の初期プロットと、グレッグ・イーガン『貸金庫』の関係

    きっかけは、グレッグ・イーガンのこのツイート。 Just watched the anime “Your Name” (which was apparently inspired to some degree by my short story “The Safe-Deposit Box” (!) though the plot is entirely different [https://t.co/8jSpxyfnGp]). It was a bit saccharine in parts, but overall pretty good, and visually ravishing. — Greg Egan (@gregeganSF) November 28, 2020 “『君の名は。』を観ました(私の短編『貸金庫』にインスパイアされたらしいけど、プロットは全く違う)。ちょっと甘った

    『君の名は。』の初期プロットと、グレッグ・イーガン『貸金庫』の関係
  • この本がスゴい!2020

    今年の一年早くない? トシ取るほど時の流れを早く感じるのは知ってるけど、今年は特に、あっというま感がすごい。恒例のこの記事、もう書くの!? と思ってる。 毎年、「人生は短く、読むは多い」と能書き垂れるが、今年は、「人生は加速的に短く、読むは指数的に多い」と変えておこう。 そして、昨年と比べると、世界はずいぶん変わってしまった。 基的に外に出ない、人と会わないが普通になり、マスク装備が日常になった。オフ会や読書会でお薦めしあった日々は過去になり、代わりにZoomやチャットでの交流が増えた。 ポジティブに考えると、そのおかげで、読み幅がさらに広がった。わたし一人のアンテナでは、絶対に探せない、でも素晴らしい小説やノンフィクションに出会うことができた。お薦めしていただいた方、つぶやいた方には、感謝しかない。 さらに、今年はを出した。 ブログのタイトルと同じく、[わたしが知らないスゴは、

    この本がスゴい!2020
  • この本がスゴい!2019

    人生は短く、読むは多い。 毎年この時期、自分のリストを振り返るのだが、読みたいが尽きることはない。読むほどに、知るほどに、知識と理解と表現の不足を痛感する。 それでも読むし、ここに書く。読むことで豊かになり、書くことで確かになるというのは当で、読んでいるときに何を知りどう考えていたかは、書くことでハッキリする。 つまり、自分で分かるために書いているのだ。フランシス・ベーコンは、話すことで機敏になるとも言ったが、わたしの場合、話すことで世界が変わった。[スゴオフ]や読書会、[冬木さんとのSF対談]や、読書猿さんとの知をめぐる対談[1][2][3]で、世界の見え方が変わった。 読書会や対談は今後もしていくが、そこで紹介されたや、2019年に出会ったの中から、わたしにとってのベストを選んだ。これが、あなたにとってのスゴとなれば嬉しい。そして、このリストを目にしたあなたが、「それがス

    この本がスゴい!2019
  • 「眼の冒険」はスゴ本

    「眼の経験値」を上げるスゴ。 のっけからのろけで恐縮だが、嫁さんは料理上手だ。料理学校に行ったこともないのに、なぜ? ――訊いたところ、「美味しいものをべてきたから」とのこと。海の幸・山の幸に恵まれたところで育ったからだという。旬の素材に親しんでおり、いわば「舌の経験値」を積んでいるのだろう。 これは、眼の経験についても同じ。いいデザインを見ることで、眼が肥える。同時に素材に対し、「いいデザイン」であるとはどんな表現なのかを感じ取れるようになる。いままで「感性を磨く」という言葉で片付けられていた経験は、「書を読む/視る」に置き換えてもいい。 スーパーマンからマッドマックス、ピカソやエッシャー、ウォーホルといった実例がてんこ盛りで、絵画や写真、タイポグラフィやイラストから、デザインの手法・見方が紹介される。モノとカタチ、デザイナーはこれらをどのように見ているのかが、デザイナー自身の言葉

    「眼の冒険」はスゴ本
  • ナチスのデザイン『独裁者のデザイン』

    アラームが鳴ったものは、後になって、ニュースを装ったプロパガンダだったり、意見誘導のために歪められた情報であることが判明することが多い。100%ではないものの、おおむね信頼できる。 アラームが鳴るものと、そうでないもの。この違いは何だろう? うまく言語化できなかったが、『独裁者のデザイン』にあった。 書は、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東といった独裁者に焦点を当て、プロパガンダを駆使してどのように大衆を躍らせ、抑圧していったかを、デザインの観点から見直したものだ。 独裁者のイメージ戦略 デザインそのものには、右や左といった政治色や、善や悪などの道徳的な属性は存在しない。デザインとは、あくまで図案であり設計であり道具といったニュートラルな存在である。 しかし、デザインを利用する側の姿勢によっては、「謀る」という意味も発生するという。デザインは、人の心を一定の方向に動かし、奮い立た

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  • ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』

    たとえば天下りマネージャーがやってきて、今度のプロジェクトでバグを撲滅すると言い出す。 そのため、バグを出したプログラマやベンダーはペナルティを課すと宣言する。そして、バグ管理簿を毎週チェックし始める。 すると、期待通りバグは出てこなくなる。代わりに「インシデント管理簿」が作成され、そこで不具合の解析や改修調整をするようになる。「バグ管理簿」に記載されるのは、ドキュメントの誤字脱字など無害なものになる。天下りの馬鹿マネージャーに出て行ってもらうまで。 天下りマネージャーが馬鹿なのは、なぜバグを管理するかを理解していないからだ。 なぜバグを管理するかというと、テストが想定通り進んでいて、品質を担保されているか測るためだ。沢山テストされてるならバグは出やすいし、熟知しているプログラマならバグは出にくい(反対に、テスト項目は消化しているのに、バグが出ないと、テストの品質を疑ってみる)。バグの出具

    ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』
  • 『会計が動かす世界の歴史』はスゴ本

    シャーロック・ホームズの金銭感覚や、ダーウィンの資産活用から、会計と革命の意外すぎる関係、複式簿記から解き明かす知性の進化など、歴史を縦横に行き交い、ミクロからマクロ経済まで自在にピントを合わせながら、人類の歴史を損得の視点から紐解く。 パッケージから、最初は「簿記の歴史」や「会計の世界史」という印象を持った。だが、書の焦点深度はもっと広い。そして、めちゃめちゃ面白い。これは、お金と人との関わり合いをドラマティックに描くだけでなく、それを通じて「お金とは何か」ひいては「価値とは何か」についても答えようとしているからだ。 「お金」が人を作った? 誤解を恐れずに言うと、「お金」が人を作ったといえる。 逆じゃね? と思うだろう。壱万円札を作ったのは人だし、その紙に「壱万円分の価値がある」(ここ重要)と信じているのは人だから。なぜ壱万円に壱萬円分の価値があるかというと、壱萬円の価値があるとみんな

    『会計が動かす世界の歴史』はスゴ本
  • 「すでにご存知のとおり」←これ

    完全に新しい話を、「すでにご存知のとおり……」で始める奴がいる。知らんがな、としかいいようがない。だが、この前置きで始めることで、あたかも題を「ご存知=ご承知」であるかのごとく扱うのはやめてほしい。そのハゲかけた髪をいっぽんいっぽん抜きたくなる。 仕事場で使われる罠として、「題より先に前提を混ぜ、あたかも前提が合意されたかのように話を持っていく」という技がある。 つまり、伝えたい主張(題)に入る前の導入部で、「合意されていない前提」を混ぜ込むことで、題に反応したら、前提に同意したことにするテクニックだ。フェアじゃないし、卑怯なやり方なのに、空気を吸うように使う奴がいる。 たとえばこう。 「この額で受注を獲得するために、さらに機能を2つ追加し、納期を4週間前倒すことが絶対だ」というやつ。するっと流して聞いてしまいそうだが、ポイントは、「この額」は社内で合意された見積でもなんでもない点

    「すでにご存知のとおり」←これ
  • 「すでにご存知のとおり」←これ

    完全に新しい話を、「すでにご存知のとおり……」で始める奴がいる。知らんがな、としかいいようがない。だが、この前置きで始めることで、あたかも題を「ご存知=ご承知」であるかのごとく扱うのはやめてほしい。そのハゲかけた髪をいっぽんいっぽん抜きたくなる。 仕事場で使われる罠として、「題より先に前提を混ぜ、あたかも前提が合意されたかのように話を持っていく」という技がある。 つまり、伝えたい主張(題)に入る前の導入部で、「合意されていない前提」を混ぜ込むことで、題に反応したら、前提に同意したことにするテクニックだ。フェアじゃないし、卑怯なやり方なのに、空気を吸うように使う奴がいる。 たとえばこう。 「この額で受注を獲得するために、さらに機能を2つ追加し、納期を4週間前倒すことが絶対だ」というやつ。するっと流して聞いてしまいそうだが、ポイントは、「この額」は社内で合意された見積でもなんでもない点

    「すでにご存知のとおり」←これ
  • 『眼の誕生』はスゴ本

    「世界の見えかたが一変する」という意味で、目からウロコの一冊。 先入観やバイアスは、明示されるまで気づかない場合が多い。例示されて初めてハッとする。それまで、「見えている」と思っていたものが、実は「見て」すらいなかったり、「見える=存在する」という思い込みの強さに囚われていたことに気づく。 見えていない ≠ 存在しない わたしの「世界の見えかた」を変えたのが、爆撃機の話だ。第二次大戦中、敵機の攻撃から生還した爆撃機を調査した統計学者が、ある提言をした。それは、「被弾箇所(赤ドット)ではなく、空白部分を強化すべし」というのである。なぜなら、空白箇所に被弾した機は、そもそも生還しなかったからという理屈だ。 「生存バイアス」とも呼ばれるこの理屈、ポイントは「見えている」という時点で何らかの選択がされていることだ。したがって、「むしろ見えていないものは何か?」という観点から「それはなぜか?」を考え

    『眼の誕生』はスゴ本
    hateq567
    hateq567 2019/01/23
    “眼の誕生”