美味へとつながる新技術の開発や食材資源に関わる謎の解明から、歴史や文化の視点まで。大学はさまざま専門的な研究を通じ、新たな「食」の魅力を見つける可能性にあふれている。 東京農業大学の前身は、旧幕府艦隊を率いて戊辰戦争を戦い、明治政府でも活躍した榎本武揚が設立した育英黌(こう)農業科である。建学の精神は「科学する心と冒険」。留学経験のある榎本は、西洋の先進性はこの学びの姿勢に秘密があると確信していた。 榎本の精神を引き継いだ東京農大の初代学長・横井時敬は「人物を畑に還す」と唱えた。優れた人材を育て、国の要である農業分野に還元するという意味だ。 現在の東京農大は農学部、応用生物科学部、生命科学部、地域環境科学部など8つの学部をもつ“農と食の総合大学”となっている。中でも応用生物科学部の醸造科学科は日本酒の醸造技術者を輩出してきたことで知られる。応用生物科学部醸造科学科教授の石川森夫さん(53歳
