近代以降の清酒酵母の親「6号酵母」の発祥蔵である秋田市の蔵元新政酒造。8代目の佐藤祐輔さんは東大文学部を卒業した後、記者、ジャーナリストを経て実家を継いだという異色の経歴の持ち主だ。全国でも数社しか採用してない木桶を使った酒造りを復活させるなど、手のかかる伝統技術を継承。6号酵母の持つ特性を生かした「No.6」など従来の日本酒とは一線を画す味わいを持つ酒を造っている。佐藤さんに学生時代の経験や日本酒造りで大切にしている価値観を聞いた。(取材・安部道裕) 音楽、文学、旅……。酒には目もくれず ──秋田ではどのように幼少期を過ごしましたか 物心付いた頃には会社から少し離れたところで暮らしていたので、つくり酒屋という家業に関しての親近感はなく、酒造りの現場などを全く知らずに育ちました。 関心事といえば芸術で、絵が好きでした。内向的な子どもだったんです。中学から高校にかけては音楽も好きになりました
