リスボンを直撃した地震は、M8.4という歴史上最も破壊的なものの1つだった。市内の9割の建物が倒壊し大火と大津波が発生して、当時約27万5000人のリスボンの人口のうち、3分の1人の約9万人の市民が犠牲になった。さらに、隣国スペインをはじめ北アフリカ、大西洋を越えてカリブ海やブラジルにまで津波が広がり、国外でも数万人が死亡したとみられる。 大航海時代以来、ポルトガルはブラジルなどの植民地からの収奪や奴隷貿易で蓄えた富で、華麗で裕福な海洋国家を築き上げた。だが、大地震によってGDPの43~57%が失われたとみられ、国土が荒廃し経済が崩壊して貴重な文化的遺産も失って国際的な地位も急落した。 「リスボン地震によってポルトガルの衰退がはじまった」といわれるゆえんである。 地球はリスクに満ちた惑星 地震後、復興をめぐって激しい権力争いが起きて政治は混乱し、国王ジョゼ1世の暗殺未遂事件まで起きた。国内
