某月某日:今日もまた暗闇の中へ。新宿バルト9で『風立ちぬ』。劇場で4分ヴァージョンの予告編を観たときから、すでに目元を潤ませ、これは完全にヤバイかもしれない……と思っていたけれど、実際問題、これは本当にヤバイ映画だった。これまでのジブリ作品とは明らかに異なる――しかし、他の誰でもない“宮崎駿”という刻印が押された圧倒的な作品世界。作画のダイナミズムと、それが生み出すエクスタシーという意味では常に感嘆しつつも、作品世界の中に時折顔を覗かせる送り手側の頑迷な思想と、それらを無視して無邪気に愛を注ぐ受け手のアンバランスな関係性がどうにも気になって、実はこれまであまりハマることのなかったジブリ映画だけど、今回は断然違った。この映画は素晴らしい。ここにあるのは、誤読のしようがない完全なる狂気だ。 『風立ちぬ』は、零戦の設計者・堀越二郎の半生を描いた映画である。最初にそう聞いたとき、自分がどんな物語を