世界的な不況は、神奈川の端に本社を置く、普段は世界からまったく相手にされていない僕の会社も見逃してはくれなかった。直撃。バカボンのオープニング、月が地球にストライクするあのイメージで、社を賭けた部長渾身の一大事業「フィリピンにフィリピンパブ出店」は潰れた。 今年最初の月次定例営業会議は、延期につぐ延期で難産だった。部長の、「わりい。俺は先のことを考えて2010年版の手帳を使っている。先取りしすぎて日付間違えたわ」「私用」「俺は鳥インフルエンザかもしれない」といういたしかたない理由によって月曜日へと延期になった。おそらく、部長は、カレンダーも時計も読めない。部長に公私の区別はつけられない。部長は風邪のたびに鳥インフルエンザだと騒ぐ。諦めの境地に立っている僕は、なにも感じない。白けた空気の流れる会議は、フィリピンパブ出店計画中止の詳細な報告が無念そうな表情をした部長から語られてしまうと、「セ・