祇園(ぎおん)祭で知られる八坂神社(京都市東山区)の大規模な本殿について、中心部の原形が春日大社境内(奈良市)にある摂社、水谷(みずや)神社に由来するという新説を黒田龍二・神戸大名誉教授(建築史)が打ち出した。当初の建築様式に類似性がみられ、八坂神社は春日大社の影響を受けたと考えられるという。論文が「月刊文化財」(文化庁監修)に掲載された。 国宝に指定された八坂神社本殿は江戸時代前期の建立だが、古い形式を継承。本殿内に礼拝する空間の礼堂を持ち、供え物をささげる棚があるのが特徴となっている。一方、現在の水谷神社本殿も江戸時代末期の建築だが、古い形を留めているとされる。祭神はいずれも素戔嗚尊(すさのおのみこと)(牛頭天王=ごずてんのう)で、疫病退散などの信仰を集めてきた。 黒田氏は、八坂神社本殿中心部の棚に注目し、施された紋の模様「剣巴紋(けんどもえもん)」が水谷神社にある紋と共通することなど