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ブックマーク / honz.jp (33)

  • 『AI監獄ウイグル』史上最悪の「AI監獄」は誰によってつくられたか - HONZ

    「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」とは、ドイツの哲学者、テオドール・アドルノの言葉だ。アウシュヴィッツを生んだ文明の野蛮さを乗り越えることなしには、人間の存在も野蛮なままだと彼は考えた。 だが残念ながら21世紀も事態は変わっていない。それどころか「より洗練された野蛮」とでも呼ぶべき事態が出来している。書は中国の新疆ウイグル自治区で進行中の恐るべき人権弾圧に関するルポルタージュである。 新疆ウイグル自治区には約1100万人ものイスラム系ウイグル族が住む。彼らに対する中国政府の苛烈な弾圧はすでに広く報じられ、強制収容所の実態なども知られるようになった。欧米諸国が北京冬季五輪の「外交ボイコット」を表明し、国際問題に発展したことも記憶に新しい。だが書を読むまで、この問題の真の恐ろしさをわかっていなかった。書が告発するのは、人権弾圧の背後にあるテクノロジーの問題である。 自治区

    『AI監獄ウイグル』史上最悪の「AI監獄」は誰によってつくられたか - HONZ
  • やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? アバウトにしてアナーキー。ざっくりまとめるとこうなるのだろうか。なんだかやたらと凶暴でハードボイルドな室町時代。日人は律儀で柔和などという言い方は絶対に通用しない。室町時代の後半は戦国時代だったから、というわけではない。武士たちだけでなく、農民や女性、僧侶までもがなんだか殺気立っているのだ。まずは『びわ湖無差別殺傷事件』から。 びわ湖がくびれていちばん細くなっているところ、琵琶湖大橋のかかっている西側に堅田という町があった。というか、今もある。そこに兵庫という名の青年がいた。“他の堅田の住人と同じく、周辺を通行する船から通行量をとったり、手広く水運業を行ったり、場合によっては海賊行為を働いたり“ と、とんでもない多角経営を営んでいた。湖なので、海賊ではなくて湖賊だが、まぁ、それはよ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ
  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

    『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ
  • 『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ

    同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBTが治療対象となる未来などやってくるはずがなかろう。未来物語でもなければ架空のストーリーでもない。米国で実際におこなわれた人体実験なのである。 書『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』の冒頭シーンがこれだ。いったいどんな内容のなのか。意識せずとも期待感が広がっていく。まるで脳のどこかに電気刺激が与えられたかのように。 この実験をおこなったのは、精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒース。統合失調症病などさまざまな精神疾患に対して、患者

    『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
  • 日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ

    の科学は失速している。一昨年の3月、ネイチャー誌に掲載されたレポートは大きな反響を呼んだ。一般の人たちには驚きを持って迎えられたようだが、多くの研究者にとっては、やはりそうかという感じであった。 『誰が科学を殺すのか』は、企業の「失われた10年」、「選択と集中」でゆがむ大学、「改革病」の源流を探る、海外の潮流、の4章から構成されている。毎日新聞に掲載された「幻の科学技術立国」シリーズが元になっただ。 大学に関しては、行きすぎた選択と集中、地方国立大学の疲弊、若手研究者の待遇の悪さ、博士課程進学者減少などが紹介されており、内部で実感していることと完全に一致する。 どのテーマについても、客観的かつ冷静な記述と考察がなされている。わかっているにもかかわらずマスコミがなかなか書かなかったiPS細胞関連予算の問題点についても、果敢に踏み込んでしっかりと書かれている。 ネイチャー誌の記事以来、論

    日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 - HONZ
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
  • 『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』この宇宙を作ったのは神か? それとも科学者か? - HONZ

    かつてノーベル賞物理学者のリチャード・ファインマンはこう言った。「自分で作れないものを、私は理解していない」。 このようなDIY精神こそが、世の中のイノベーションを加速させてきたことは言うまでもないだろう。情報科学しかり、ゲノム科学しかり。しかしこの潮流が、宇宙科学の領域にまで及んでいるとは知らなかった。 実験室で宇宙を作る。そんなことが、理論的には実現可能と言えるところまで来ているというのだ。書はこのような構想が成立するまでの科学者たちの足取りを追いかけながら、宇宙科学の最前線を紹介した一冊である。 実験のコアとなる理論は、多くの科学者のバトンリレーによって改良されてきたインフレーション理論だ。 どこで、どうやるかはともかくとして、わずか25グラムほどの「偽の真空」が得られれば、実験室の中でインフレーションを起こさせることにより、立派な「宇宙」が誕生するという。 この「偽の真空」に相当

    『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』この宇宙を作ったのは神か? それとも科学者か? - HONZ
  • 『10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち』 世界初のパーソナルゲノム医療はいかに実現したか - HONZ

    2003年、ヒトゲノムの解読が完了し、科学は歴史的な一歩を踏み出した。それから6年後の2009年、今度は医療において大きな一歩が踏み出される。患者個人のゲノムを解析し、その結果にもとづいて診断・治療を行うという「パーソナルゲノム医療」が産声を上げたのだ。書は、医師と研究者、そして患者と家族に焦点を当てながら、その新たな医療が生まれるまでを描いたドキュメンタリーである。 先に言ってしまうと、書がことさら魅力的なのは、それが豊かな科学的知識を授けてくれるからではない。そうではなく、登場人物たちの悲喜こもごもを濃密な筆致で描ききっていることこそが、書の際立った魅力であろう。その点において、ピューリッツァー賞も受賞しているこのジャーナリストのコンビはやはり強力だ。事実を淡々と積み上げていく記述ながら、最後に読者をアッと言わせるだけの力がある。 舞台はアメリカのウィスコンシン州。5歳になるニコ

    『10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち』 世界初のパーソナルゲノム医療はいかに実現したか - HONZ
  • 「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ

    『巨大ウイルスと第4のドメイン』を筆頭に魅力的なウイルス論、入門を書いてきた著者による最新作『生物はウイルスが進化させた』は、「生物」に対する見方を根底から覆す、最新のウイルス研究成果についての一冊だ。多くの野心的な仮説と、確かにそうかもと思わせる検証でぐっと惹きつけ、読み終えた時にはウイルスに対する考え方が大きく変わっていることだろう。 まさにそれによって、「生物とは何か」「ウイルスとは何か」、そして「生物の進化とは何か」を問い直す「コペルニクス的な転回」を余儀なくされる、そんな存在こそが「巨大ウイルス」なのかもしれないのである。 内容的にはいくらか過去作との内容の重複もあるが、ウイルスとは何か、細菌との違いといった基的なところの説明から、従来のウイルス観を覆す巨大ウイルスとは何か、その特異性とは──と話をつなげ、”そもそもウイルスの定義とはどうあるべきなのだろうか”と最終章にてこれま

    「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ
  • 『脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議』 創造的能力の副産物としての記憶違い - HONZ

    記憶がえてして頼りないものであることは、いまではよく知られている。その象徴的かつ重大な例としてすぐに思い浮かぶのは、記憶違いにもとづく冤罪事件だろう。国際的な非営利団体の報告によると、2015年にDNA鑑定によって受刑者の無実が証明された事件は325件あった。そしてそのうち、じつに235件もの事件で目撃者の誤認が関わっていたというのである。 記憶違いの問題はけっして他人事ではない。と行った初デートの場所を間違って記憶していたこと、あるいは、他人のやった仕事を自分がやったかのように勘違いしていたこと、そのような経験に誰しも思い当たるふしがあるのではないだろうか。しかしそれならば、わたしたちの記憶はどうしてそのように頼りないのか。また、記憶がときとして大きく歪められてしまうのは、いったいどうしてなのだろうか。 書は、そのような問題にイギリスの若手研究者が迫ったものである。著者のジュリア・シ

    『脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議』 創造的能力の副産物としての記憶違い - HONZ
  • 「ビッグマック」を食べよう 『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 - HONZ

    100,000,000,000,000。わたしたちひとりひとりの腸内にはそれだけの数の細菌がいるという。そうした細菌たちの集まりは「マイクロバイオータ」と呼ばれ、近年その研究が脚光を浴びている。書は、マイクロバイオータとわたしたちの健康の関係について、微生物学者の夫がわかりやすく紹介するサイエンス書である。 マイクロバイオータと健康の関係については、すでにいくつかの文献が詳しく論じている。そんななかで書の目新しさといえば、副題にもある「細菌の育て方」にクローズアップしている点だろう。腸内細菌が健康のための重要な鍵を握っているのだとすれば、よりよい細菌を獲得・維持するために、わたしたちはいったい何をどうしたらよいのか。書はその点の具体策について述べた実践的な一書でもある。 そこでまずは、近年盛んに議論されている、マイクロバイオータと健康の関係についておさらいしておこう。冒頭で述べたよ

    「ビッグマック」を食べよう 『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 - HONZ
  • 『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を - HONZ

    「今、もっともエキサイティングなバイオテクノロジーは何か」。この質問に対し、多くの生命科学者は次のように答えるだろう。「それはゲノム編集だ」、と。書は、ゲノム編集がどのような技術で、この技術がいかに未来を変えうるかについて解説した良書である。 ゲノム編集とは、遺伝子の体であるDNAの狙った位置を切り貼りするなどして「編集」し、その生物のすべての遺伝情報、すなわちゲノムを改変する技術である。ゲノム編集により、有用な農作物の作出や、遺伝性疾患の治療ができるようになると期待されている。ゲノム編集技術のひとつであるCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)システムの確立により、この技術が爆発的に普及するようになった。 これまでに国内で出版されたゲノム編集関連の書籍は研究者向けのものばかりで、一般向けに書かれた入門書のような存在は皆無だった。書は生物学についての専門知識がなくても容易に

    『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    前代未聞!!女装した少年が悪と戦う少年漫画!『ボクらは魔法少年』... 2018年09月19日 2018年9月19日(水)に発売した「週刊ヤングジャンプ」コミックスの中から、日はマンガ新聞編集部イチオシのタイトルをお届けします!

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  • 『ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る』 - HONZ

    著者リサ・ランドール博士は、世界的に著名な理論物理学者で、「ワープした余剰次元」という画期的な理論の提唱者の一人として知られている。日へは、2005年に東京大学と京都大学で開催された国際会議に出席のため来訪、2007年と2014年にも東京大学で開催された講演会のために再訪している。 こののテーマは、ダークマター(暗黒物質)、すなわち宇宙の2割以上を満たす見えない謎の物質と、恐竜絶滅との驚くべき関係である。ランドール博士が2013年に共同研究者と共に提唱した最新理論「ダブルディスク・ダークマター」モデル(二重円盤モデル)が正しければ、約6600万年前に恐竜を絶滅させた彗星衝突は、ダークマターの一部が形成する見えない銀河円盤が引き金となって起こった可能性がある。さらに、今から約3000万年後にも、同じような規模の彗星衝突が起こるかもしれないという。一体どのようにして、このような推論に至った

    『ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る』 - HONZ
  • 知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ

    生命がどのようにして誕生し、進化してきたのか?だれもが興味をいだくテーマだ。完全にわかるということはありえない。しかし、あたらしい技術が開発され、あらたな発見がなされ、次第に議論が収斂してきている。全地球凍結=スノーボールアース仮説の提唱者である地質生物学者著者ジョセフ・カーシュヴィンクと古生物学者ピーター・ウォードによるこのは、最新データを網羅してまとめあげられた最高の一冊だ。 原題は A New History of Life。生命の “新しい” 歴史として、三つの視点から生命の誕生と進化が描かれていく。その三つとは『環境の激変』、『単純な三種類の気体分子(酸素、二酸化炭素、硫化水素)』、『生物自体ではなく生態系の進化』。生物そのものよりも、その環境から生命の歴史が読み解かれていく。 我々の考え方というのは基的に保守的だ。だから、現在認められるプロセスが過去にもあてはまる、とする「

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  • 『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』訳者あとがき by ドミニク・チェン - HONZ

    人工知能(artificial intelligence)という言葉は、二重の問題を投げかけている。知能を人工的に再構築することができるのか、という問いと、そもそも知能とは一体何なのか、という問いである。人間の知能の全容がまだ解明されていないのにもかかわらず、その機械的な再構築を試みようとする過程を通して、逆に人間の知能とは何かということが浮き彫りになってきている。 書は、MIT PressのEssential Knowledgeシリーズの一冊として書かれた。このシリーズは、表面的な説明や意見が溢れる時代において、非専門家にとっても質的で批評的な視座を与えることを目指している。書は、現代社会が到達した、もしくは近い将来到達するであろうテクノロジーの水準の内実に光を当てながら、機械的な知能の条件から人間の知能の質を逆照射するような一連の思考実験を提供する。そうして著者のシャナハンは、

    『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』訳者あとがき by ドミニク・チェン - HONZ
  • 数学がはじまる瞬間 —『数学する身体』に寄せて― - HONZ

    数学する身体』は、独立研究者・森田真生氏が「数学とは何か」そして「数学にとって身体とは何か」を自問しながら数学歴史を追いかけた一冊である。その流れは、アラン・チューリングと岡潔の二人へと辿り着く。 そしてこの森田氏の試みを応援すべく、二人の刺客が客員レビューに名乗りを上げた。一人目は科学哲学を専門とし、同じように身体論へアプローチする下西 風澄さん。彼は書を「格闘の書」と評す。ちなみに2人目は10月21日に掲載。乞うご期待。(HONZ編集部) 私たちが心を高鳴らせるのは、いつも「はじまりの瞬間」である。 数学という完成された美しい建築物を眺め、そして学ぶとき、私たちはその起源を忘却している。しかし、そこには確かに、不安になるほどの未知と可能性に開かれた「はじまりの瞬間」、そしてそこから走り出す物語があったのだ。 書は、「数学がはじまる瞬間」、その風景を垣間見せてくれる。それは、生ま

    数学がはじまる瞬間 —『数学する身体』に寄せて― - HONZ
  • 『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』 - HONZ

    「すべての人間が一カ所に集まってジャンプしたらどうなるか?」など、ふと気になっても、「いや、そんなことはありえない」と、うっちゃってしまうような疑問や、「周期表を現物の元素で作ったらどうなるか?」など、突拍子もない疑問に、科学と数学と、シンプルな線画のマンガを使って答えるアメリカでは、サイエンス系のとしては破格の大ヒットで、ニューヨークタイムズのベストセラー・リストに34週連続で載った。 著者のランドール・マンローは、大学で物理学を学んだあとNASAでロボット工学者 として働いた人物。現在はフルタイムのウェブ漫画家で、「恋愛と皮肉、数学と言語の ウェブコミック」、xkcdというサイトを運営している。そこから派生した読者投稿サイト、xkcd What If が書のベースだ。マンローは投稿される疑問に、数学と科学、そして「ユーモア力」を駆使して、あっと驚くような答えを出す。その過程で、

    『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』 - HONZ
  • 『超ひも理論をパパに習ってみた』 - HONZ

    「シャープペンシルを使って文字を書くためにはどんな力が必要ですか?」と質問されたら、あなたはどのように答えるだろうか。 シャープペンシルを持って動かすための筋力、芯が紙を滑ることで作られた黒鉛の粉を紙の繊維のなかに残すのだから摩擦力、文字を書くのだから思考力も必要だ、などと答えるのではなかろうか。 しかし、世界中の物理学者に同じ質問をすると全員から同じ答えが返ってくるはずだ。それは電磁気力である。物理学者たちにとって力は4種類しかないからだ。重力、電磁気力、弱い力、強い力である。 筋力も摩擦力も脳の働きもすべて 電磁気力が引き起こした現象である。いろいろな原子をまとめて水やタンパク質などの分子を形作るのは電磁気力だし、その分子同士がどう結合し動くかも電磁気力によって決められる。それでは他の3つの力は何を意味しているのだろう。 重力については説明する必要はないだろう。宇宙で無重力状態を体験す

    『超ひも理論をパパに習ってみた』 - HONZ
    kujoo
    kujoo 2015/04/28