9.11からまる5年が経過して、オリバー・ストーン監督作品「ワールド・トレード・センター」が公開された。ベトナム戦争を批判的に描いた「プラトーン」「7月4日に生まれて」などで社会派の映画監督として知られるオリバー・ストーンが、9.11をどのように描いたのか、興味深く思って映画館に足を運んだ。 公開後の米国での観客動員数やこの作品に対する評判は、まあまあのようだが、オリバー・ストーンのファンからすると、この作品には失望を感じざるを得ないだろう。というのも、これまでのストーンの作品に見られた「社会批判」の目がこの作品では、すっぽり抜け落ちてしまっているからだ。映画は、9.11テロが発生した時に、強い使命感を持ち、命を賭して被災者の救出に向かった湾岸警備局警察の警官が、ビルの崩落によって生き埋めになり、救出されて九死に一生を得るまでの過程を描いている。 2886名の犠牲者と20名の生存者 288