池尾和人さんが2月21日に亡くなった。68歳の若さだった。筆者は池尾さんが2018年2月、慶応義塾大学経済学部の定年を前にした最終講義で、パネリストとして登壇して以来、お目にかかる機会がなかったため、訃報を聞いて本当に驚き、落胆した。葬儀の日、元気な頃の遺影を見て、生粋の京都人である池尾さんは「お公家さん顔」だったと改めて思った。 池尾さんの業績には、まずミクロ経済学を本格的に日本の金融論に導入したことが挙げられる。情報の経済学などの応用ミクロ分析の本格的な活用は、池尾さんが1985年に出版した『日本の金融市場と組織』を嚆矢(こうし)とする。日銀に在籍していた筆者も80年代後半、米国留学から帰って同じような論文を書いていた時期があり、年齢も筆者が2歳下と近かったため、早くから知己を得ることができた。 残り721文字(全文1076文字)
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