59 ウ ィ トゲ ン シ ュタ イ ンの 美 学 的 批 評 奥 雅博 1は じめ に ウィ トゲソシ ュタイン個人 の生 活に とって、美的な事柄 や芸術 的な事柄 が大 きな意味 を持 っ ていた こ とは明瞭であ る。音楽一 つを例 に とってみて も、『反哲学的 断章 』1)に 我 々はかな り 多 くの覚え書 きを見 いだす ことがで きる。 この 覚え書 きか ら、彼 が どの作 曲家 や作 品を好ん だ か、それ らについて どの ような寸評 を残 したかが読 み取 れる。 私 自身 は、 ウ ィ トゲンシ ュタインの これ らの コメン トの当否 を論 じる能力 を持ち合わせて い ない。 しか し、彼の批評 がおおむね適切で あった とした場合、 この ことを理 由に、「ウ ィ トゲ ンシ ュタイソは美学の領域で も一流であ った」 とい う結論が導かれ るであ ろう