*2007年度首都大学/東京都立大学大学院集中講義(9/11〜9/14)の講義ノートです。ただし、「5.交換可能性/交換不可能性と真正性の水準」は時間が足りなくなって、実際には講義できなかった部分です。 上野千鶴子さんは、『脱アイデンティティ』の序章で、「社会集団が包括的帰属から部分帰属へと変化するにつれ、断片化されたアイデンティティのあいだを、一貫性を欠いたまま横断して暮らすことも可能になった。この複数のアイデンティティのあいだに、強い『隔離』や『非関連』が成立した状態を、私たちは『多重人格』とか『解離性人格障害』と呼ぶが、それは病理である以前にポストモダン的な個人の通常のありかたではないだろうか」と述べて、さらに「アイデンティティの理論の革新は、アイデンティティ強迫や統合仮説と対抗してきたが、それらの努力は、『宿命』としてこの強いられた同一性から逃れたい、または逃れる必要があると考え