M.リンチ「コンテクストのなかの沈黙」――表題のテーマを掲げる「カテゴリー対で発言が組織された」ある研究会での議論を聞いていて真っ先に思い浮かんだのがこれ。(ブレイクで隣に座っていたIさんにこのことを言ったら同意して下さったので、この直観はそう外れていないだろうと思う。) この論文の冒頭、リンチは、サックスがある学会で「もし私があなたの頭に銃を突きつけて、『あなたの研究に一番影響を与えた理論家の名前を教えてください』と言ったら、あなたは誰の名前をあげますか」という質問に対して長い沈黙の後、「その質問には答えられない」と言ったというエピソードを紹介して次のように書く。 この出来事は、理論化に対するエスノメソドロジー固有の――人によっては‘尊大な’と言うであろう――態度を象徴するものである。ここで「理論化」ということで、私は、著名な著述家、基礎的な文献を讃える知的系譜を構築する作業のことを意味