「世界遺産登録で、ビジネスチャンスがやってくる」 帰郷して20年後の2001年、事業と町づくりを両輪でやってきた私たちの足元を揺るがす大きなできごとが訪れます。石見いわみ銀山が世界遺産登録の前提となる「暫定リスト」に掲載されることになったのです。 世界遺産への登録を、足元を揺るがす大きなできごとと表現したことに違和感を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちにとってはまさに青天の霹靂でした。 初期の世界遺産登録説明会では、壇上にいる人たちが「みなさんうかうかしている場合じゃないですよ、世界遺産になったら、どんなビジネスチャンスが訪れるかわかりませんよ」と、まくしたてていました。私は「やっぱりそこか」と落胆しました。世界遺産登録が人間の欲をあおるできごとになっていることに、ひっかかりを感じたからです。世界遺産登録に真っ先に異を唱えたのは夫でした。夫は反対していたわけではありませんが、