東京大名誉教授の山内(やまのうち)一也さん(89)は、ウイルスの研究や感染症対策に半世紀以上携わってきた第一人者だ。新型コロナウイルス感染症が流行する中、自らをウイルス学の「語り部」と自認する山内さんに、ウイルスと人類の歴史や、脅威との向き合い方を聞いた。 山内さんは東大農学部を卒業後、国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)や東大などでウイルスやワクチンの研究に携わった。日本ウイルス学会の総会には、1953年の第1回から参加。最新の知見の分かりやすい解説にも取り組み、89歳になった今年だけで「ウイルスの世紀」(みすず書房)など3冊を出版している。 「現在のウイルス学の進展は、50年代に始まったと言える。だから私は、ウイルス学の歴史をほとんど実体験できました。2年前に出版した『ウイルスの意味論』(同)が集大成だと思っていたら、新型コロナが出てきた。長年取り組んできたので、『語り部』だと思