作家 柳美里 子ども時代を振り返ると、嫌なことばかりだった気がします。 「バイキン」というあだ名をつけられ、「バイキンが伝染る」とクラスメイトたちは指で「エンガチョ」のバリアを張り、運動会の「ジェンカ」や「マイムマイム」や「オクラホマミキサー」などのフォークダンスでは、だれひとりわたしの手に触れる子はいませんでした。 ドッジボールでは、ボールが汚染される、といちばん前に立っていても狙われることはありませんでした。 給食では、クラスメイト全員が、わたしがよそうとバイキンが伝染る、と食べることを拒否しました。 いくら説得を試みてもクラス一丸となって給食をボイコットする生徒たちへの対応に苦慮した担任の先生は、わたしを給食当番からはずすという安易な解決方法を選びました。全校生徒で給食当番にならなかったのは、わたし一人だけだったと思います。 先生もまた、生徒たちのイジメに加担していたので