河野俊史(北米総局<ワシントン>=2002~05年) 著名な言語学者、ノーム・チョムスキー教授をマサチューセッツ工科大学(MIT)に訪ねたのは2003年の初め、イラク戦争の開戦がカウントダウンを迎えていたころだ。 米国の政治や外交に積極的な発言を続けていたチョムスキー氏は当時74歳。穏やかな語り口ながら「この国では人々をパニックに陥れるプロパガンダ(組織的宣伝活動)が太鼓の音のように鳴り響いている。イラク情勢が(戦争の)危機に発展したのは、ブッシュ政権がそうしようと決めたからだ」と語り、米国が仕掛ける戦争への懸念をあらわにした。 混迷の度合いを深める中東情勢の源流を、毎日新聞の歴代特派員の証言で振り返ります。この記事は連載の第9回です。 過去の記事はこちらから。 愛国心の嵐 その3カ月余り前、私は2度目のワシントン勤務に就いていた。5年ぶりの米国の風景は大きく変わっていた。自宅が決まるまで