1時間35分 いつの時代も世の中には誰もが表立って反対できない“錦の御旗”が存在する。今の時代、その“御旗”のひとつが「民営化」だろう。 一昨年9月、小泉前首相が乾坤一擲の勝負に出、前代未聞の勝利に終わった、いわゆる郵政民営化一点選挙が記憶に新しいが、最近は「社会保険庁は民営化して一から出直せ」という声もかまびすしい。 本書は、民営化とは何か、なぜ必要なのか、そのメリットならびにデメリットは、といった問題を、世界の実例をひもときながら解説した入門書である。入門書といっても、ぴりりと辛い“わさび”が随所に練り込まれている。 著者はまず、一口に民営化といっても、動機や事情はさまざまであり、手法も千差万別であることを示す。例えば手法ひとつ取っても、直接売却型、株式公開型、経営陣や従業員に売却するMBO(Management Buy-out)型といった「所有移転型」と、一定期間の運営を民間に委託す