記者会見する松野博一官房長官=21日、首相官邸「不愉快だ」 6月14日夜、怒気を含んだ声が聞こえるや否や、その電話は唐突に切られた。冷静な仕事ぶりで知られる松野博一官房長官だが、この時ばかりは顔が青ざめたに違いない。電話の相手は、自身が所属する自民党安倍派(清和政策研究会)の領袖(りょうしゅう)、安倍晋三元首相だった。 安倍氏の怒りの原因は、島田和久防衛事務次官を交代させる人事案だった。首相時代、6年以上にわたり秘書官として支えた側近で、現在も近い関係にある。ロシアによるウクライナ侵攻で国際社会が激動し、国内では国家安保戦略改定や防衛費増額という重要な作業が控える中、自身にとっての功労者の交代はあり得ないというのが安倍氏の認識だった。経済財政運営の指針「骨太の方針」をめぐり、安倍氏と官邸・財務省が激しい攻防を繰り広げた直後だけに、外形的には〝意趣返し〟に映った面もある。