各地に甚大な被害をもたらした2019年10月の令和元年東日本台風(以下、台風19号)の直撃により、箱根湯本―強羅間の運休が続いていた箱根登山鉄道。復旧の見通しについて、当初は2020年秋と発表されたが、予定よりも3カ月程度前倒しで、7月23日の始発より通常ダイヤで運転が再開された。 本稿では、これまで経験したことのないような被害の復旧にあたり、どのような工事が行われたのか、また、なぜ前倒しでの復旧が可能になったのかをレポートする。 「どこから手を付けていいか…」 箱根湯本―強羅間では、全線にわたって倒木などの被害が発生した。中でも、現地を見た土木担当者が「頭が真っ白になり、どこから手を付けていいかわからなかった」というほどの甚大な被害が発生したのが、大平台駅―仙人台信号場間に位置する「大沢橋梁」と、宮ノ下駅―小涌谷駅間の「蛇骨陸橋」の2カ所だ。