今年の共通テストの出題をきっかけに、信用創造についての教科書的な説明の当否がネット上で話題となっています。本源的預金(現金)をもとに貸出が行われ、貸し出されたお金が預金として銀行に戻り、再び貸し出されて(以下繰り返し)、本源的預金の何倍ものお金が市中に出回るようになるという信用創造論の説明は、中学や高校の教科書にも登場して親しみ深いものです。お札の行き来を通して金融のしくみを日常の感覚で自然に理解できるという点では、この説明(しばしば「又貸しモデル」と呼ばれます)に大きな利点があるといえるでしょう。 もっとも、このことは同時にこのモデルの欠点でもあります。というのは、お札(日銀券)という「モノ」の行き来に囚われて、「与信というのは貸し手と借り手の間の債権債務関係をめぐる問題である」という視点がすっかり抜け落ちてしまうからです。ネット上で展開されている議論も、そのためにやや混乱が生じているよ