戦後日本の復興は、敗戦国にもかかわらず、他のアジア諸国の追随を許さない驚異的なものだった。冷戦を受けて米国が意図したアジア秩序を補完する形だったが、結果として日本はアジアを忘れ、内戦状態が続いたアジアと対照的な平和を享受した。それが今の東アジアの歴史認識と領土問題をめぐる、きしみをもたらす背景なのではないか。政治学者の姜尚中さんに聞いた。(記事は2014年9月20日に配信。肩書などは当時) 変質する平和と豊かさ アジア忘れ、原点見えず 姜尚中さんに聞く ―日本と東アジアを覆う歴史・領土問題のきしみは何に起因するのでしょう。 「今に続くアジアの相克は、実は終戦の時点にすでにはらまれていたと思う。戦後まもなく中国は内戦状態、朝鮮戦争も始まり、日本の植民地から解放された朝鮮は、アジアの戦後秩序をつくる当事者から除外されてしまう。米国は日本を経済的なアジアの橋頭 堡 (ほ) としてよみがえらせて