私が佐藤愛子さんを知った最初の頃、彼女はみずみずしく、そして、若かった。 襟ぐりの広いワンピースかなにかを着ていて、そこに白い肌が現われて、私は、〈やりたいなあ〉と思ったこともある。 今でも佐藤愛子さんはきれいである。ときどき、〈おや〉と思うほど、色っぽいと感じることがあるが、「やらしてくれよ」などとはいわないことにしている。 そういう関係になる可能性については、彼女との間では、もうきれいさっぱり、私はあきらめている。 (佐藤愛子、田辺聖子『男の背中、女のお尻』中央公論新社、2018) こんばんは。女のお尻とか〈やりたいなあ〉とか「やらしてくれよ」とか、のっけから穏やかではありません。引用の文章を書いているのは、小説家の川上宗薫さん(1924-1985)です。かわかみそうくんと読みます。 えっ、知らない? 私も知らなかったのでググってみたところ、うん、有名な小説家だったんですね。芥川賞の候