やっと雪が溶けてきて、表通り以外の路地も歩きやすくなってきたので、小さい道を遠道する。 このあたりの土の湿り気からすると、きっとまもなく土筆が顔を出すのであろう。 あっちの赤茶の芽は、福寿草が咲くのだろうか。 まだありもしない春の気配を適当に皮算用しながら歩く。 下ばかり見て歩いている私の耳に、突然「小鳥の成る木」の気配が飛び込んできた。鳥が狭い場所にびっしり集まって、甲高くささやき合っている賑やかな声だ。 どこかに一本、ひどく小鳥に気に入られるたちの木があるようだけど、どれだろう。 さえずりに惹かれて、いったん通り過ぎた道をちょっと引き返し、声のする方へ小径を折れた。 「どう聞いてもこの木から聞こえてくるのだけど」 こぢんまりした庭のある民家の、道路側にあるイチイの木のあたりが、あからさまに一番にぎやかなのに、動くものの様子はない。 常緑樹とは言っても冬の活動停止中の樹木である。 こんな