作家の大江健三郎氏とお会いすることができた。会ったといってしまっては大げさで、大江氏の姿に接することができたというべきかもしれない。僕はまぢかの大江氏の姿をうっとりと見つめ、その言葉のひとつひとつにうなずく(二言、三言だけ言葉を交わした)だけだった。それでも、大江健三郎は僕にとっては特別な作家である。おそらく、一生忘れられない記憶になると思う。 この週末、北京へ出かけたのは,11日に社会科学院でひらかれる大江健三郎を巡るシンポジウムを聴くためだった。二日ほど早く北京入りしていた僕は、10日の夜に、大学院での師匠であり、このシンポジウムにメインスピーカーとして参加する小森陽一先生を空港まで迎えにいった。その後、先生の部屋で社会科学院の先生と飲んでいると、許先生という方が、いま大江さんが食事からもどって、小森先生を部屋で待っていると伝えにきた。そこで、僕たちは大江氏の部屋に移動することになった