Aさんは小さい頃、両親の仕事の都合でソ連時代のロシアの田舎に住んでいたことがある。 当時のロシアの片田舎には外国人学校もなく、Aさんは地元の公立小学校に通うことになった。 学校では日本人は相当珍しく、アジア系の人種が多いその地域でもAさんは目立った。 というより、言葉もほとんどわからないAさんに話かける者はなく、遠くからこちらがわからない言葉でからかわれるような具合だった。 「子供でもなんとなくわかるんですね、バカにされているのが。辛かったですよ」 打ち解けたきっかけは水泳教室だった。ソ連の公立小学校にはプールがない。 なにかの行事なのか、Aさんのクラスは街中にあるプールに出かけた。 皆が水に顔をつけるのも苦労している中、日本で水泳が得意だったAさんは、そのプールで一人だけ見事な泳ぎを見せた。 それ以来、周囲のAさんを見る目が変わった。片言ながら、Aさんはクラスのグループに誘われて、帰りの