図書館への寄付と地域との新たな「絆」の構築:太宰府の事例 太宰府天満宮には,古典籍等が収蔵された「御文庫」が存在する。その歴史は古く,300有余年前に遡る。菅原道真の大宰府西下に従った味酒安行の四十六世の直孫にあたり,太宰府天満宮の祠職を世襲する社家(しゃけ)出身の検校坊快鎮(けんぎょうぼうかいちん)という好学の僧侶によって開設が発起され,1676年(延宝四年)に創設されたものである。 ●太宰府天満宮「御文庫」と寄進 開設時に集積された蔵書については,延宝四年「天満宮御文庫書籍寄進帳」に明らかである。創設から1739年(元文四年)にかけての約60年間での,和漢諸種の書物,その多くを占めたと思われる貴重な写本類等などの寄進は,部数にして381部,冊数にしておよそ3,500冊に及んでいることがわかる。その蔵書の寄進者を見てみると,発起人の検校坊快鎮及びその一族のほか,貝原益軒・林信篤といった学