権力基盤が弱かったせいかぱっとしない室町幕府のせいで、今まで室町時代好きの歴史マニアの気持ちがよく理解できなかったのだが、『贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ』を拝読して、その面白さが少し分かるようになった気がする。 本書では贈与と言う一見素朴な行為の発展と限界が紹介されているのだが、特にそれが高度に形式化した室町時代に重点が当てられている。贈与と言うと、経済システムの中では狭い人的ネットワークの中で行われる補完的な何かに思うかも知れない。現代社会ではそうかも知れないが、中世社会まではそうでは無かったらしい。なぜならば贈与と税金の境界が曖昧だったからだ。 日本においては、米を収める租や繊維製品や貨幣を収める調と言う税金は、神にたいする贈り物(初穂)が古代社会において転化したものだそうだ。これらの多くは「官物」と言う地代に統合され税に発展する*1が、中世社会においても初穂は「上分」として残るこ
![税の発生過程の一つが分かる『贈与の歴史学』](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/952674fe993ccfd670813f37533debd6382cef3b/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2F4.bp.blogspot.com%2F-WomyeVG_vbE%2FUjjS6sCou9I%2FAAAAAAAALqk%2FMPMyy05QxTI%2Fw1200-h630-p-k-no-nu%2F%25E8%25B4%2588%25E4%25B8%258E%25E3%2581%25AE%25E6%25AD%25B4%25E5%258F%25B2%25E5%25AD%25A6.png)