吉村和真、田中聡、表智之『差別と向き合うマンガたち』臨川書店。 いい本だ。マンガの研究者、ライター、編集者、マンガに興味ある人、必読の一冊といっていい。「差別」の二文字でおそらく読者を選んでしまい、あるイメージで書店に並び、買われることになるはずだが、そのイメージは裏切られるだろう。「差別」問題へのもっと詳しい記述を期待する向きには喰い足りないと感じられるのかもしれないし、著者たちもたぶんそれを予想している。逆に、僕のように、差別問題にリアリティがあまりなく、知識もなければ、ちゃんと考えたこともない人間でも、マンガが好きなら面白い。興味をひかれて読んでゆくと、「差別」というよりも、「社会」に向かって開かれてゆくマンガの「読み」の問題を様々に考えさせられ、その一つとのサンプルとして「差別」問題がある、という感じだ。 とはいえ「差別ってタイトルにあげなければ、もっと一般読者を獲得できたかもしれ