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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (44)

  • コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』

    「嘘つきは経済学者の始まり」という諺があるが、コンサルタントも入れるべき。 中の人として働いたことがあるので、その手法は分かってる(まとめ:[そろそろコンサルタントについて一言いっておくか])。だから書は、徹頭徹尾、黒い笑いが止まらない。騙される幹部が悪いのだが、振り回される社員はたまったものではない。ファームであれジコケーハツであれ、理論武装を「外」に求める人は、予習しておこう。あるいは、コンサルティングを「説得の技術」と捉え、逆にそこから学ぼう。 書は、マジシャンが種明かしするようなもの。コンサルタントの方法論である「適応戦略」や「最適化プロセス」「業績管理システム」は、役に立たないどころか、悪影響にもなると暴きたてる。著者は経営コンサル業界で30年も働いて、いいかげんこの「お芝居」にウンザリして、懺悔の名を借りた曝露を出したという。その具体例が生々しい&おぞましい&あるある。

    コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
  • 統計で犯罪を測る『犯罪統計入門 第2版』

    統計の怖さと強さを学ぶ、格好の教則。 たしかに統計は強力なツールだ。しかし、やりようによっては、正しい情報を用いて、堂々と白を黒と言い包めることができる。「嘘には三つある。嘘、大嘘、そして統計だ」、これが冗談でもなんでもないことが分かる。 書は、犯罪統計を探す場所・方法・ノウハウを詳説する。また、警察統計の収集手続きやメカニズムを解説することで、それぞれの統計情報の特性が分かる。さらに、官庁だけでなく、主要先進国の犯罪・司法統計など、ネットを利用した犯罪統計の検索の最前線を紹介している。このテの研究にすぐ着手したいなら、第3部の犯罪統計リファレンスが一番に役立つだろう。そして、通して読むことで、「統計のカラクリ」が分かる仕掛けになっている。 たとえば、「少年犯罪が凶悪化している」神話を思い出そう。いまだに信じている人がいるかもしれないが、比較対象を取捨することで、あるいは異なるスケール

    統計で犯罪を測る『犯罪統計入門 第2版』
  • 今すぐ使える『明日からつかえるシンプル統計学』

    まちがえるな、統計学は道具だ。統計は学ぶものではなく、使うもの。 これはわたし自身への戒言。だから、使い方を誤らない程度に理解していればいいし、そのために教科書をイチから読み込む必要も、Rをマスターする必要もない。もちろん様々な武器(統計手法)が使えるに越したことはないが、次のような問題と向き合っているなら、書をオススメする。 あと500人お客を呼び込むためには、いくら広告費が必要か? カスタードケーキがチョコパイに勝つには、「味の改良」と「販促キャンペーン強化」のどちらが有効か? クラス全体の成績が低迷している。国語と数学の両方が苦手な生徒だけ補習したほうがいいのか、全員に国語の補習をしたほうがいいのか 前任者から引き継いだデータが大量にあるが、それぞれの関係や着眼点がまとめられてない。どこから手をつければいいか? 社内のKPI(Key Performance Indicator :

    今すぐ使える『明日からつかえるシンプル統計学』
  • なつかしい未来『月は無慈悲な夜の女王』

    とうとう読んでしまった、SFの最高傑作として名高い『月は無慈悲な夜の女王』。大事にとっといた一品をべてしまった、充実感と喪失感で胸一杯なところ。 地球からの搾取に苦しむ月世界人が、地球を相手に独立宣言をするストーリーラインに、テクノロジー、ハードサイエンス、ヒューマンドラマから、政治・経済・文化をてんこ盛りにしてくれる。 不思議なことに、未読のはずなのに既読感が激しい。どこを切っても「なつかしい」が出てくるのだ。 たとえば、“自我”を持つコンピュータ。自ら学び、自己生成プログラムを走らせる。人とコミュニケートし、自分を守るためにプロテクトをかけるあたり、『2001年宇宙の旅』のHAL9000や『わたしは真悟』を思い出す。そのコンピュータがきっかけで、普通の主人公が革命に関わってゆく様は、典型的な巻き込まれ型+召喚ヒーローもの。『マックス・ヘッドルーム』や『ジョウント』(スティーヴン・キン

    なつかしい未来『月は無慈悲な夜の女王』
  • 俺の嫁が美人なわけ。『ファスト&スロー』はスゴ本

    わたしの嫁さんは、美人である。 いわゆるカワイイ系ではなく、美人。レトロなフランス人形のような整った顔立ちをしている。一目惚れから十数年、結婚してよかったなーと思う。 だが、男女が一緒に暮らすのだから、順風満帆というわけにゆかぬ。カッとなって激しくやりあった夜や、冷たい応酬の日々が続いたときは、後悔することもある。 さらに、メタ視点から、「この結婚」に対する認知の歪みも自覚している。結婚に費やした時間、コスト、感情、労力が莫大かつ取り戻せないため、「この結婚はいいものだ」という認識に反する事柄を、予め排除しようとする。この結婚を否定することは、そこに費やしたわたしを否定することになる。あまりに犠牲が大きいため、結婚を疑うことに一種の恐怖を感じる。 そしてこれを、「サンクコストの誤謬」と呼ぶことも知っている。莫大な投資をした事業から撤退しようにも、取り戻せない費用を、サンクコスト(埋没費用)

    俺の嫁が美人なわけ。『ファスト&スロー』はスゴ本
  • この本がスゴい!2012

    人生は短く、読むは多い。せめてスゴいと出会えるよう、それを読んでる「あなた」を探す―――このブログの究極目的だ。ともすると似たばかり淫するわたしに、「それがスゴいならコレは?」とオススメしてくれる「あなた」は、とても貴重な存在だ。 ネットで呟いたり、オフ会で発表したり、集団でブックハントに勤しんだり。バーチャル・リアルを問わず、そんな「あなた」同士の交流の場で、加速度的にスゴいに会ってきた。中でもここ一年で読んできたものから、選りすぐりを並べてみた。 実は、ここは既読のご紹介の場なので、氷山一角だ。だから、一番アツいfacebook「スゴオフ」を覗いてみてほしい。読まずに死ねるか級がざくざくあるデ。 昨年までの探索結果は、以下の通り。 このがスゴい!2011 このがスゴい!2010 このがスゴい!2009 このがスゴい!2008 このがスゴい!2007 このがスゴい

    この本がスゴい!2012
  • 娘親限定「女の子が幸せになる子育て」

    親が読んで、ほっとするフェミニストが何と言おうが、男の子の子育てと、女の子の子育ては、ちがう。男女は、性差ではなく性格が性別に定着していくもの。つまり、「男の子らしさ」や「女の子らしさ」は、お互いもともともっており、成長の過程で(主として環境により)際立たせられていくものでないかと。 しかし、ほとんどの育児は、性差を意識していないか、あるいは「男の子限定」の内容となっている。なぜなら、育児を手にするのはたいていママだから。「女の子=自分が小さかった頃」を考えて、自分を基準にしてしまうだろうから。 そんなニッチにピッタリとあてはまるを読んだ。なじみの図書館の予約待ち順位は、「100位」。amazonでは見えにくいが、書がどれだけ望まれているか、よく分かる数字だ。娘を持つ親のためのアドバイスが満載しており、まさにいま読みたかった一冊。 とはいうものの、デジャヴ感やライフハック臭も

    娘親限定「女の子が幸せになる子育て」
  • 伝染する物語「イリアス」

    世界最古の小説。紀元前750年頃に成立したという。もとは口伝で歌われた叙事詩だが、読みやすい散文調なっている。虚飾を廃した骨太な描写、淡々と語られる悲劇と栄光は、簡素な分、まっすぐ心の臓に届く。 そして心震えた分、形容詞で肉付けしたくなる。エピソードとして切り出し、換骨奪胎・アレンジして語りたくなる。舞台や映画だけでなく、SFやオマージュの"元ネタ"として有名なのは、「私ならこうする」誘惑に満ち満ちているからだろう(ダン・シモンズの「イリアム」なんて典型)。「イリアス」は、翻案や改作で自己増殖を促す物語、つまり伝染(うつ)る物語なのだ。 ストーリーは、この上もなくシンプルだ。トロイア戦争十年目の戦闘が延々続く。ただしこの戦争、ゼウスをはじめ神々が介入してくるからややこしい。どの神が誰に肩入れして、どんな風に助力したか、微に入り細を穿つ。飛来する矢に息を吹きかけ落としたり、槍をホーミングさせ

    伝染する物語「イリアス」
  • 「貧乏人の経済学」はスゴ本

    経済学者≒ソフィスト」と冷やかに観察しているが、書は例外。 なぜなら、後知恵の机上論を分かりよいストーリーに押し込んで一丁あがりにしないから。あらゆる問題を一般原理に還元し、紋切型に落とし込む発想を拒絶するから。解決策はランダム化対照試行(RCT:random control test)によって検証済のものだから。 紋切型の経済学者が唱える「銀の弾丸」はないものの、「こんな状況下でこういう対策を打つと、確かに効果が期待できる」といったシナリオは描ける。面白いことに、そのシナリオを支える理屈は、「いま」「ここ」にも適用できるセオリーであるところ。わたしが貧困の罠に陥っていない理由は、わたし個人の努力よりも、社会システムに依拠しているものが大であることが分かる。見えるもの(社会保険、公衆衛生、教育システム)だけでなく、そこからくる見えないもの(安心、安全)に二重三重に保護された「わたし」が

    「貧乏人の経済学」はスゴ本
  • 本好きが選んだ新潮文庫の160冊

    好きなを持ち寄って、まったりアツく語り合うスゴオフ。今回のテーマは「新潮文庫」。ジャンル不問・冊数未定でありながら、やってみるとむつかしい。 なぜと問うなら、自分の書棚と脳裏を浚ってみるといい。文芸、海外歴史、冒険、SF、純文、対談、ミステリー、ファンタジー、ドキュメンタリー、エッセイ、記憶から積山から、懐かしの一冊から流行りの新刊まで、いくらでも出てくるから。ありすぎて選べないのだ。 それでもムリヤリ選んだのが、「この新潮文庫がスゴい!(徹夜小説編)」。これは「新潮文庫」+「寝忘れる徹夜」という組み合わせで厳選したもの。そして、人力検索はてなで質問したのが、「『この新潮文庫がスゴい!』という、あなたのオススメを教えてください」になる。わたしの偏見「理系のはてな」を跳ね返す文理入り乱れの怒涛のラインナップが揃った。 そして、実際にみんなで語り合ったのがスゴオフ。新潮文庫の良さ(

    本好きが選んだ新潮文庫の160冊
  • この新潮文庫がスゴい!(徹夜小説編)

    「マイベスト新潮文庫」を探すべく、書棚と脳裏を漁るのだが……出るわ出るわ、記憶からも積山からも怒濤のごとく、文芸、海外歴史、冒険、ミステリ、ファンタジー、ドキュメンタリー、エッセイ……ありすぎて選べない。 だから、も一つ「しばり」を設ける。それは「徹夜小説」であること。ひたすら面白く、寝を忘れて読みふけった鉄板を挙げる。くれぐれも、明日がお休みの夜を見計らって手にしてほしい。 ■「シャンタラム」 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ 未読なら、おめでとう。「これより面白いのがあったら教えてくれ」という傑作だから。憑かれたように読みふけり、時を忘れる夢中だ。(わたしは4回乗り過ごし、2度事を忘れ、1晩完徹した)。巻措く能わぬ程度じゃなく、手に張り付いて離れない。とにかく先が気になって気になって仕方がない。前知識は邪魔、完全に身を任せて、物語にダイブせよ。 とはいうものの、蛇足気味に補足

    この新潮文庫がスゴい!(徹夜小説編)
  • 「音楽の科学」はスゴ本

    音楽とは何か? 音楽を「音楽」だと認識できるのは、なぜか? 音楽を「美しい」と感じたり、心を動かされるのは、なぜか? 音楽好きなら、誰でも一度は思ったことを、徹底的に調べ上げる。そして、究極の問いかけ、「音楽は普遍的なものか」に対して真正面から答えている―――答えは"No"なのだが、そこまでのプロセスがすごい。 類書として「響きの科楽」を読んでいるが、こちらのほうが入りやすい。リズムや平均律、協和音、周波数といった音楽に関するトピックを取り上げ、音楽と快楽のあいだにあるものを浮かび上がらせる。 いっぽう「音楽の科学」はかなり踏み込んでいる。音楽の定義から、楽曲と使う音の恣意性、「良い」メロディの考察、音楽のゲシュタルト原理、協和・不協和音、リズムと旋律、音色と楽器―――ほぼ全方位的に展開される。さらに、音楽を聴くときの脳の活性状態についての研究成果と、音楽に「ジャンル」がある理由、「音楽=

    「音楽の科学」はスゴ本
  • この本がスゴい!2011

    今年もお世話になりました、すべて「あなた」のおかげ。 このブログのタイトルは、「わたしが知らないスゴは、きっとあなたが読んでいる」。そして、このブログの目的は、「あなた」を探すこと。ともすると似たばかり淫するわたしに、「それがスゴいならコレは?」とオススメしたり、twitterやfacebookやtumblrで呟いたり、「これを読まずして語るな!」と叩いたり―――そんな「あなた」を探すのが、このブログの究極の目的だ。 昨年までの探索結果は、以下の通り。 このがスゴい!2010 このがスゴい!2009 このがスゴい!2008 このがスゴい!2007 このがスゴい!2006 このがスゴい!2005 このがスゴい!2004 昨年から始めたオフ会で、たくさんの気づきとオススメと出会いを、「あなた」からもらっている。目の前でチカラ強くプッシュしてもらったり、物語談義を丁々と続けたり

    この本がスゴい!2011
  • なぜ糞システムができあがるか

    納期が、予算が、バグフィックスが、性能、デザイン、インタフェース、使い勝手、保守が、可用性が、移行にマイグレーション、稼働率が、糞だ。そもそも要求を満たしとらんまともに動かない糞システムが、なぜ莫大な銭金かけてできあがってしまうのは、なぜか? アナリスト、コンサルPM、SE、プログラマ、テスタ、ヘルプデスク、メンテ、ユーザー、そして経営者と、それぞれの立場から言いたいことは山ほどある。それぞれの立場から「これぞ真の原因!」と叫びたいのも分かる。経営者を除き、全てのキャリアをやってきたから。だから、自信をもって断言する。糞システムができあがる、最も根っこの原因はこれだ。 一つ前の仕事をしている それぞれの立場で「やるべきこと」は分かっている。だからこそ、そのインプットが体を成していないことが明白なのだ。仕方がないので、自分で「インプット」相当を作るハメになる。 例えばプログラマ、プログラミ

    なぜ糞システムができあがるか
  • 読まずに死ねるか「ゲド戦記」

    人生は短いのに、読みたいは多すぎる。 せめて「入」を絞ろうとしても、欲望は際限なく湧きあがる。興味と関心の赴くまま濫しているうちに、逃しているがあることに気づく。しかも、だいぶ遅くになって。かろうじての救いは、死にぎわでないこと。死期が不可逆に迫ったなら、読書どころじゃなかろう。何を読んでも後悔するのは目に見えている。しかし、それでも、「コレ読んでおけばよかった」の「コレ」を読む。そして、「ゲド戦記」は「コレ」だ。 重厚な世界設定に心奪われ、緻密な内面描写に感情移入し、謎が明かされるカタルシスに酔う。ただひたすら夢中になれるのだが、哀しいかなハマる自分を醒めて見ると、著者の意図が映りこんでくる。キャラやイベントの出し入れについて、ル=グゥインはかなり計算しており、読み手の年齢まで考慮した上で、時間軸を決めている。 たとえば、第1巻「影との戦い」は、ゲド自身の成長譚になる。生い立ちから

    読まずに死ねるか「ゲド戦記」
  • 「逆光」はスゴ本

    辞書並みの上下巻1600頁余から浮上してきたときの、正直な気分。読了までちょうど1ヶ月かかったけれど、この小説世界でずっと暮らしていきたい。死ぬべき人は死んでゆくが、残った人も収束しない。エピソードもガジェットも伏線もドンデンも散らかり放題のび放題(でも!)いくらでもどこまででも転がってゆく広がってゆく破天荒さよ。 ストーリーラインをなぞる無茶はしない。舞台は1900年前後の全世界(北極と南極と地中を含む)。探検と鉄道と搾取と西部と重力と弾圧と復讐と労働組合と無政府主義と飛行船と光学兵器とテロリズムとエロとラヴとラヴクラフトばりの恐怖とエーテルとテスラとシャンバラとデ・ニーロがぴったりの悪党と砂の中のノーチラス号と明日に向かって撃てとブレードランナーと未来世紀ブラジルとデューン・砂の惑星とiPhoneみたいな最終兵器とリーマン予想とどうみてもストライクウィッチーズな少女たち(でもありえない

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  • 読書の夏で20冊、夏をテーマに選んでみた

    爽やかな田舎の風景だとか、ひと夏の恋や冒険、心胆凍る恐怖夜話など、夏を感じる、夏を味わう作品を選んだ。読むとアツくなるやつも混ざっているのでご注意を。 まず、夏といえば夏休み。だから「よつばと!」(あずまきよひこ)。学生じゃない身分になって幾年月。子どもが、「もうすぐ夏休みだー」などと指折り数えていると、「チッ」と舌打ちのひとつもしたくなるもの。あれだけ沢山の入道雲を眺め、あれだけ沢山のセミとりをしたにもかかわらず、キラキラとした思い出は欠片ぐらいしか残っていない。それを1000倍ぐらい拡大したのがこれ。天真爛漫の「よつば」が、周りを巻き込む無茶ぶりに、文字どおりハラ抱えて笑う。と同時に、帯のキャッチコピー「いつでも今日が、いちばん楽しい日」が胸をアツくする。夏休みを生きなおすような気分になる傑作。 次に、夏といえば観鈴ちん(異論却下)。だから「Air」(桂遊生丸)。ゲームのみならず、TV

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  • 処女でない少女には、何が残るか?「聖少女」

    少女から処女を引いたら、「う」しか残らない。そしてその「う」は、嘘の「う」だ。少女とは、処女と嘘から成り立っていることを知らされる、倉橋由美子の傑作。 やはり、作品にはふさわしい「読むべき年頃」がある。フィクションにまつわる仕掛けに不慣れな人が読んだら、ガツンと犯られる。高校生ぐらいのウブ(?)なわたしに読ませてやりたいw、いわゆる美少女ゲーム(死語)慣れしているなら、「交通事故」「記憶喪失」「遺された手記」の設定だけで見抜くだろうね(むしろ、これこそギャルゲのご先祖様だッ)。とはいえ、描写はリアルだ。 あたしははずかしさのあまり身悶えしました。熱い樹液のようなものが脚から胴へ、それからパパに捕らえられている果実の尖端にまで、はげしい勢いでのぼってくるのを感じながら、あたしは首を反らせ、パパの顎の下に頭をもたせかけていました。パパハアタシの胸がマダカタクテ樹ノ幹ミタイダトイウノカシラ? 残

    処女でない少女には、何が残るか?「聖少女」
  • マクニール「世界史」はスゴ本

    800ページで世界史を概観できる名著。 「シヴィライゼーション」という文明のシミュレーションゲームがある。暇つぶしのつもりで始めたのに、暇じゃない時間まで潰されてしまう危険なゲームだ。マクニール「世界史」もそう。それからどうなる?なんでそうなる?に次々と答えてくれる書は中毒性が高く、読むシヴィライゼーションといってもいい。 ゲームのように面白がれないが、ゲームのように熱中して、マクニール「世界史」の最新完訳版を読む。世界で40年以上にわたって読み続けられており、blog/twitter/tumblr でスゴいスゴいと噂には聞いていたが、たしかに素晴らしい。何が良いかっていうと、「眠くならない歴史」であるところ。 話は少しさかのぼる。流行に乗っかって教科書開いたはいいが、あれだね、睡眠導入剤として最適だね、山川世界史。パブロフのなんちゃらのように、開いた途端、急速に眠くなる。「メソポタミア

    マクニール「世界史」はスゴ本
  • 明日をどこまで計算できるか?

    「未来予想図」は、ほら、思ったとおりに叶えられてく。 ポイントは、「思ったとおりに」だね。複雑な方程式やモデリングで重厚に着飾っていても、そこには人が理解できる因果や主観が入り混じるストーリーに過ぎないというのが、書の結論。 気象、遺伝、経済――ジャンルはそれぞれ違えども、その質は変わっていないという。世界は一定の法則にしたがって動く機械だと解釈し、その法則は過去を観測することによって因果律を逆算する。いったん法則が抽出できれば、あとはモデル化し、未来の予測に使える――この時計仕掛けのような世界観は、古代の天文学から始まっており、古くは託宣や占星術から、金融工学、カ オス理論、遺伝子診断まで脈々と続いているという。 たとえば気象モデルについて。大気を、巨大な三次元格子である球座標系に分割し、それぞれをコンピュータによって観測・集計する。結果から気象解析を行い、あるモデルを作成する。しか

    明日をどこまで計算できるか?