(前編から続く) 「寒いです」 そう僕は答えた。坂を上ってくるあいだは青い空から覗く日が差し込んで暖かかったし、急な勾配もあったからそこでは汗もかいた。栃木県道249号・黒部西川線、鬼怒川から川治と走ってこの道に入った僕とうっちぃさんは、土呂部(どろぶ)を経てようやくこの道のピークにたどり着き、越えた先で望んだ山々の、目の当たりにした紅葉風景に息をのんで足を止めていた。 さまざまな色の木々が織りなす紅葉の情景に見惚れ、その衣(きぬ) をまとった全方位の山々に圧倒されていた。日常的に自分界隈で目にしている色って果たしてどんなだっただろう──僕の記憶にある色の平均的概念を壊し、いとも簡単に掃いて捨ててしまった。これは大自然だ。これが大自然だ。それしか思いつかない。 ピークを越えて、同時に空気が変わったのを感じた。風が冷たいのだ。峠の向こうとこちらで気温が明らかに何度か違うのだ。心地よさも覚えな