(2021年1月6日 アルツハイマー型認知症の診断から約13年11ヶ月) *アメリカ杉に捧ぐ(小話) ある所におさるという小さな女の子がいた。 おさるは毎日2階の子供部屋の窓から、ぼんやり外を見るのが好きだった。 窓から外を眺めて、何かいい事や面白い事がある訳ではない。それでも眺めるのは、他にこれと言って何かいい事や面白い事がある訳ではなかったからだ。 おさるの頭の中は白くて薄い霞が掛かったように、呆として虚無だった。それでなければ取り止めもなく空想の世界に生きていた。 おさるがぼんやりと窓から見ていたのは、ブロック塀と家の間に植えられている木だった。その名は知らない。 真っ直ぐに空を目指すかの如く凛と立ち、その木はブロック塀に遠慮するかの如く、おさるの部屋の窓の高さで枝を張っていた。 おさるは当初、その木に別段興味が有った訳ではない。しかし、枝や深い緑の葉を見ると不思議な安心感があった。