木村直恵「〈批評〉の誕生 明治中期における〈批評〉〈改良〉〈社会〉」『比較文学』第45巻、2002年、7–22ページ。 http://ci.nii.ac.jp/naid/40006129994 ある文化圏に外来の術語が入りこみ、それが短期間のうちに広く使われるようになるという現象をどう理解すべきか。この問いに答えるときに有効な議論の型の一つをきれいにみせてくれるすぐれた論文です。 「批評」という言葉は明治10年代に一度導入されたものの、広範に使用されることはなく、やがてすたれてしまいました。それが明治10年代の終わりごろに坪内逍遥が使いはじめるようになってから、一つのジャンルとして急速に定着します。「人生の批判」として出された『小説神髄』は、近代小説として批評的読解の対象となるべく書かれたテキストであり、実際に批評文を呼び起こしていきました。この後、欧米文明を確かな目で鑑定し、すぐれたもの