2009年は演劇界や映画界で、石川五右衛門を主人公とする作品が人気を博し、ちょっとしたブームとなった。私が出演しているテレビ番組でも五右衛門の特集が組まれ、私が取材レポーターを務めたが、その過程で、「浮島十三重石塔の上から5 層目の笠石が、五右衛門に盗まれた後、藤森(ふじのもり)神社の手水鉢(ちょうずばち)の台石にされている」との伝承を、初めて耳にした。 宇治市の、平等院にほど近い宇治川の中洲(なかす)に建つ浮島十三重石塔は、私もよく知っている。おそらく十数回は対面しているだろうが、その5層目の笠石がどうなっているのか、意識して注目したことはなかった。 そこで京都市伏見区の藤森神社を訪ね、手水鉢の台石を確認してみると、たしかに、浮島十三重石塔の笠石とそっくりの形状で、サイズ的にも合致する。どうやら、十三重石塔に由来すると見て、間違いなさそうだった。 なのでいま一度、浮島十三重石塔を凝視して