とっつきにくい法律書のような書名だが、どっこい、むしろ「柔らか本」だ。音楽、文学から遺伝子科学、商品のブランドまでとりあげる話題が幅広く、面白い挿話が満載で、読み始めたらぐいぐい引き込まれてしまう。何でも「知的財産」として私有化し、ビジネスにしてしまう企業社会やグローバリズムへの問いかけをはらんだ、警世の書でもある。 挿話を二、三あげれば▼有名な「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」はいまやワーナー・ミュージック社の所有物で、公的な場所で歌うにはライセンス契約が必要▼モンサント社製の遺伝子組み換え植物の花粉が風に運ばれて受粉してしまったカナダの農場主が「特許侵害だ」と訴えられた▼自分の昔の曲の著作権侵害で訴えられたギタリストがいる▼特異な白血病患者の担当医が、彼の脾臓(ひぞう)から得た遺伝情報でひそかに特許をとり、製薬会社から巨額報酬を得た。それを知った患者が訴えたが敗訴、等々。 「ものづ