前回述べた「比較優位の原則」は、外国との貿易に関して直接の意味合いを持っている(リカードがこの理論を考えたのも、「穀物法」による小麦の輸入禁止に反対するためだった)。 たとえば、前回の説明において、「わが家と隣家」を「日本と中国」に、「リンゴとミカン」を「技術的に高度な資本財と大量生産の消費財」にそれぞれ置き換えて解釈すればよい。そう考えれば、日本が資本財に、中国が消費財に特化することにより、互いが利益を得られることがわかる。 さまざまな国は、その国が相対的優位性を持つ産業に特化し、その生産物を輸出する。そして、その国の条件から見て相対的に不利な生産物は、他国から輸入する。こうした貿易を行なうことによって、生活水準が向上するのだ。 第二次世界大戦後の日本は、領土拡張という方法に頼るのでなく、また食料自給にはこだわらず、工業化を進めてきた。それは、比較優位の原則にあった方向だった。だから、日