熱力学はさまざまな物質の熱力学的性質の統一的な視点を与える。熱力学を洗練された数学で定式化 するために,接触幾何学やシンプレクティック幾何学を含むさまざまな微分幾何学が用いられる。一方で, アファイン微分幾何学は微分幾何学の一分野で,情報幾何学と両立する体系になっている。ここで情報幾 何学は熱力学と両立することが知られている。これらを組み合わせると,熱力学はアファイン微分幾何学 と両立することが期待され,また,熱力学にアファイン微分幾何学的手法が導入されることが期待できる。本論文では平衡および非平衡熱力学のアファイン幾何学的記述法を提案する。平衡系に対しては,さまざまな熱力学量がアファイン微分幾何学的対象と同一視されることや熱力学にアファイン微分幾何学 的対象を導入することを示す。例として,比熱はアファイン基本形式と同一視され,熱力学相空間に平坦 接続が導入されることなどが挙げられる。非平