『夏祭浪花鑑』といえば大阪の夏の風物詩みたいなものだ。この夏は、松竹と話し合いがもたれたのかどうか知らないが、文楽劇場だけでなく、松竹座での歌舞伎にも『夏祭』がかかった。かねがね同じ狂言の同時公演があったらおもしろいのにと思っていたので、うれしい限りである。 とりあえず、『夏祭』のあらすじをば。ちょっと訳ありで、玉島磯之丞とその恋人である傾城琴浦は、団七九郎兵衛の計らいをもって釣船三婦の家で過ごしていました。団七の義父・三河屋義平次は、金を目当てに、ウソをついて、その家から琴浦をかどわかします。しかし、磯之丞の父に恩義のある団七は、義平次を謀って、琴浦を取り戻します。どう考えても義平次が悪いのですが、騙されて金を取り損ねたとわかった義平次は、みなしごから育ててやったのに恩知らずな奴めが、などと団七をなじりまくるのです。そして、いよいよ我慢ならなくなった団七が義平次を殺してしまう、というスト