津波にさらわれた2階、自らが流されないように男性は屋根のくぎに手のひらを打ち付けた。東日本大震災の大津波で、多くの住宅が波にのまれた仙台市宮城野区。男性は凍える濁流を6時間、約1キロにわたり漂流し、助かった。「生きだのが本当によかったか、わがんねえ」。すべてを流された男性は先祖の位牌(いはい)を捜している。 渡辺勝敏さん(67)は地震発生時、友人と車で宮城県多賀城市内を走っていた。大きな揺れに自宅の家族を心配し、迎えに。途中で近所の人の車で避難する家族とすれ違ったが、気づかなかった。 自宅に着くと、「バリバリバリーッとものすごい音」がした。2階に上がって、窓からながめると、真っ黒い津波が来ていた。「2階なのに、見上げるくらいの波よ。ドーッと当だって、すごい勢いで天井から10センチぐらいまで水が上がってきた。そこから顔を出して息をしてた。上まで水が来る、と思ったから、2階のサッシを足で蹴って