“昔、シリコンバレーは今よりヒッピー的で、広告を嫌う空気があった。グーグルという変わり種が登場する前のことだ。我々がひっくり返そうとしている悪人、旧メディアを象徴する罪だと言われることが多かった” 『人間はガジェットではない』(早川書房、2010年)の著者、ジャロン・ラニアーは言う。 考えてみれば、当然である。反体制派の流れを汲むヒッピーたちが、「資本主義」の権化が好きであったはずはない。だが、今やインターネットにおける経済行為は広告に収斂(しゅうれん)されつつある。 “私が友人と世界初のバーチャルリアリティマシンを作ったときに目的としていたのは、この世の創造性と表現力を高め、人が深く共感できる世界、人がおもしろいと思う世界にすることだった。この世界から逃げ出すことではなかった”と、「セカンドライフ」などのバーチャルリアリティで永遠の生を得ようとする人々に対して、ラニアーは言う。