「少年」1953年5月号〜11月号連載。 以前当ブログで取り上げた「気体人間の巻」「フランケンシュタインの巻」もそうだったが、ページ数がさほど多くないわりに物語の密度が高い。それはテーマや構成の密度が高い、ということでもあるし、一コマ一コマが小さめで、なおかつコマのなかに描かれた人物や背景の絵が細かいこともあって、絵的に1ページあたりの密度が高い、ということでもある。 この物語は、国木田独歩の小説『武蔵野』で始まって『武蔵野』で終わる。そんな始まりと終わりだから、もちろん物語の主舞台は東京の武蔵野である。(作中に小説『武蔵野』から引用したとおぼしきフレーズが出てくるが、正確な引用ではないようだ) 武蔵野の自然を深すぎるほど愛している動物学者・Y教授は、その地が人間の手で開発されてしまうことを絶対に許せなかった。武蔵野の開発はしない、との約束を破られて怒ったY教授は、自分が死んだように見せか