韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第2話の後半です。日本と韓国の境にある対馬から見えるものとは? 第2話前半はこちら↓ https://www.webchikuma.jp/articles/-/3293 梨畑 韓さんの家の縁側に座ると、目の前に梨畑がある。その奥には対馬の山の稜線が霞んで見える。 「私もここに来て住もうかな」 スンボクさんが背伸びをしながらつぶやく。後から合流した友だち二人も「うん、うん」とうなずいている。 「ところで梨はありませんね」 たしかに梨の木に梨がない。もう収穫が終わったのだろうか? 「いや、梨は実らない」 皆が一斉に韓さんのほうを振り返ると、真顔で言う。 「受粉しないんだよ。蜂がいないから。でもなんとかするつもり」