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ブックマーク / www.webchikuma.jp (25)

  • 第6話 徒手空拳のコリアン・ファイターたち②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)

    韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第6話の後篇です。アメリカに渡ったコリアン・ファイター、マスター・リーの数奇な人生について。ぜひお読みください。 第6話前篇はこちらから↓ https://www.webchikuma.jp/articles/-/3513 10年間で70万人が移民した時代 「それにしても、どうしてマスターは気づかなかったのですか? 表紙に船員手帳と書いてあるのだから、見ればわかるでしょうに」 そう思うのが普通かもしれない。しかし、マスターは空港の入国審査官に指摘されるまで、「パスポート」と「船員旅券」の違いなど知らなかった。無理もない話だ。この時は彼にとって、生まれて初めての海外旅行だったのだ。 そもそも当時の韓国で、実際にパスポートを見たことのある人など皆無に近かった。韓国海外旅行が自由化されたのは民主化後の1989年からであり、

    第6話 徒手空拳のコリアン・ファイターたち②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)
  • 第6話 徒手空拳のコリアン・ファイターたち①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)

    韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第6話の前篇です。アメリカに渡ったコリアン・ファイター、マスター・リーの数奇な人生と大山倍達について。ぜひお読みください。 コリアンタウンへ 「アメリカに行ったら、コリアンタウンを訪ねてみてほしい」 在日韓国人の友人に言われたのは、1980年代の終わりの年だった。 生まれ育った街には在日コリアンが多かった。中学校のバスケ部で一緒だった友人の家には表札が2つあり、日名と韓国名が並んでいた。狭い路地には白い服を着たお年寄りたちがいた。下着だと思っていたのは、モシ(麻)の夏用韓服だったのだろう。 高校にあがると、ヤンチャな界隈では朝鮮学校に知り合いがいることが、ちょっとしたステイタスにもなっていた。 「私のバックは朝高のジョンホだから」 そんなことを自慢している女友だちもいた。大人たちの中には差別偏見丸出しの人間もいたけれ

    第6話 徒手空拳のコリアン・ファイターたち①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)
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    Guro 2024/06/07
  • 民主主義が機能不全に陥ったとき、私たちは何を考えるべきなのか|ちくま新書|梅澤 佑介|webちくま

    民主主義が機能不全に陥ってしまったとき、私たちはどうすればよいのか。民主主義のみならず、それを抑制・補完する原理としての自由主義、共和主義、社会主義といった重要思想を取り上げ、それぞれの歴史的展開や要点を手際よく紹介した梅澤佑介著『民主主義を疑ってみる――自分で考えるための政治思想講義』。同書より「まえがき」を公開します。 †空前の「民主主義」ブーム? ここ数年、「民主主義」という言葉を冠したが数多く出版されています。その内容は民主主義を擁護するものから批判するものまでヴァラエティに富んでいます。同じ立場に立つものであっても、切り口やアプローチはさまざまです。しかも著者を見ると、狭義の政治学者だけでなく、いわゆる文化人と呼ばれるような人たちも民主主義について一家言があるようです。出版業界ではいま民主主義がブームになっているように見えます。 また、民主主義ブームはの世界にとどまりません。

    民主主義が機能不全に陥ったとき、私たちは何を考えるべきなのか|ちくま新書|梅澤 佑介|webちくま
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    Guro 2024/04/05
  • 橋本治というジャンル|ちくま新書|武田 砂鉄|webちくま

    2月刊、橋治『思いつきで世界は進む』に関して、武田砂鉄さんにエッセイをご寄稿していただきました。 突然の訃報により、こののみならず、「橋治」とは何者だったのかについて、論じていただいております。ぜひともご覧ください。 さて、書評を書くために書を読もう、と思ったところで訃報が入った。著作をたくさん読んできた。一度だけお会いしたこともある。ツイッターを開けば、偲ぶ声が連なる。追悼文的な内容のほうがいいのだろうか(と、「こういう時に最適な文章とは何か」を模索する自分に苛立つ)と思いながら書をめくると、しばらくの間、この人がもういなくなってしまった、という現実をすっかり忘れて没頭する。目の前に異物を発見し、その異物がどんな形をしているのかをいくつもの角度から見つめ、どうやったらこの異物を柔らかくほぐせるか、挑発できるか、壊せるか、仲良くなれるかと、しつこく絡んでいく時評コラムに憧れを持ち

    橋本治というジャンル|ちくま新書|武田 砂鉄|webちくま
  • 久方ぶりに烈火のごとく怒ったのだが、その憤怒が快いあれこれのことを思いださせてくれたので、怒ることも無駄ではないと思い知った最近の体験について|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま

    久方ぶりに烈火のごとく怒ったのだが、その憤怒が快いあれこれのことを思いださせてくれたので、怒ることも無駄ではないと思い知った最近の体験について 蓮實重彥さんの連載時評「些事にこだわり」第17回を「ちくま」1月号より転載します。昨秋に開催された小津安二郎生誕百二十周年のメモリアル・イベントは、なぜ失望のうちに終わってしまったのか。その二十年前、著者自身も深く関わった生誕百年・没後四十年の記念イベントとの違いを思い起こします。ご覧下さい。 なかには例外的に聡明な個体も混じってはいるが、これからこの文章を書こうとしているわたくし自身もその一員であるところの人類というものは、国籍、性別、年齢の違いにもかかわらず、おしなべて「愚かなもの」であるという経験則を強く意識してからかなりの時間が経っているので、その「愚かさ」にあえて苛立つこともなく晩期高齢者としての生活をおしなべて平穏に過ごしている。ところ

    久方ぶりに烈火のごとく怒ったのだが、その憤怒が快いあれこれのことを思いださせてくれたので、怒ることも無駄ではないと思い知った最近の体験について|些事にこだわり|蓮實 重彦|webちくま
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    Guro 2024/01/21
  • 第4話 赤い牌楼はいつできたのか?①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第4話です。今回は、釜山の「上海街」から華僑の人びとの話を語ります。 前回の「釜山のロシア人街」について、読まれた方々から感想をいただいた。 「韓国映画仕事をしていた90年代初頭、当時新進気鋭だった助監督さんがキノーと崔健のカセットテープを餞別にくれたのを思い出します」 同時代を過ごした人々の言葉は、記憶の解像度をぐっと高めてくれる。ただし、韓国社会の変化は激しく、風景はどんどん更新されてしまう。 「次回、釜山に行った時には、ぜひロシア人街にも行ってみたいと思います」 それはおそらく無理だと思う。今もキリル文字の看板は残っているものの、ロシア料理の店などは数軒が残るのみ、新型コロナパンデミックを経て、街の様

    第4話 赤い牌楼はいつできたのか?①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)
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    Guro 2024/01/19
  • 第2話 国境の島の梨畑②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第2話の後半です。日韓国の境にある対馬から見えるものとは? 第2話前半はこちら↓ https://www.webchikuma.jp/articles/-/3293 梨畑 韓さんの家の縁側に座ると、目の前に梨畑がある。その奥には対馬の山の稜線が霞んで見える。 「私もここに来て住もうかな」 スンボクさんが背伸びをしながらつぶやく。後から合流した友だち二人も「うん、うん」とうなずいている。 「ところで梨はありませんね」 たしかに梨の木に梨がない。もう収穫が終わったのだろうか? 「いや、梨は実らない」 皆が一斉に韓さんのほうを振り返ると、真顔で言う。 「受粉しないんだよ。蜂がいないから。でもなんとかするつもり」

    第2話 国境の島の梨畑②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)
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    Guro 2023/12/16
  • 第2話 国境の島の梨畑①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第2話は、対馬に移住した韓さんの話。今回は、その前半をお届けします。 対馬へ 福岡でチャン・リュル監督に会い、数日を過ごしてから対馬に渡った。 博多港には近隣の離島行きの船が出ており、対馬にも高速船とフェリーが出ている。壱岐を経由して厳原港まで2時間余り、空は青く海は穏やかで最高の船旅日和だ。 対馬では対岸の釜山から来る友人と待ち合わせていた。友人とはこの連載の「はじめに」にも登場いただいたキム・スンボクさん。神保町の書店「チェッコリ」のオーナーである。もともとは釜山から一緒に船に乗る予定だったのが、私の福岡行きが急遽決まって別ルートになった。 対馬への船は福岡と釜山の両方から出ている。釜山発は国際線なのだが、

    第2話 国境の島の梨畑①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/4)
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    Guro 2023/12/16
  • 第3話 釜山のロシア人街①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載第3話です。戦後にサハリンに取り残された人びとについて、そして釜山のロシア人街へ――。 対馬から釜山へ 9月の終わり、対馬から船で釜山に移動した。前日の雨はすっかりあがり、雲一つない空は海と一体化して全てが青い。そこから釜山港までの1時間半ほどの船旅は以前にもまして快適だった。 「まったく揺れませんねえ」 「船が新しいからじゃないですか?」 物知りな人が教えてくれたのは当で、今回私が乗ったのは韓国の船会社が今年2月に新しく導入した高速船だった。滑るように海を走る。韓国の変化のスピードは当に速いが、これもまた例外ではない。さらに港も新しい。釜山港の国際線旅客ターミナルも2015年に移転してリニューアル・オープ

    第3話 釜山のロシア人街①|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)
  • 第1話 私もナグネだから②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載。第1話、映画監督チャン・リュルの話の後半をお届けします。 第1話 前半はこちら https://www.webchikuma.jp/articles/-/3258 映画『豆満江』と「脱北者」 チャン・リュル監督の代表作といえば、やはり『豆満江』である。2010年の秋に釜山国際映画祭とアジアフォーカス・福岡国際映画祭で紹介されて大きな話題となった。 「ものすごい映画でした。生涯、忘れられない作品です」 わざわざ東京から駆けつけたという人は、それ以降もチャン・リュル作品は欠かさずに見ていると言っていた。 豆満江は中国北朝鮮の国境を流れる川の名前である。映画は命がけで川を渡る北朝鮮の人々と、対岸にある同胞(中国

    第1話 私もナグネだから②|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)
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    Guro 2023/10/19
  • 第1話 私もナグネだから|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)

    韓国から、世界へ。世界から、韓国へ。人が激しく移動する現代において、韓国の人びとはどのように生きてきたのか? 韓国史・世界史と交差する、さまざまな人びとの歴史を書く伊東順子さんの連載の開始です。第一話は、映画監督チャン・リュルの話。今回は、その前半をお届けします。 はじめに 暑すぎた夏もやっと終わるかなという9月初め、釜山から福岡行のフェリーに乗った。日韓国を結ぶ定期航路はもれなく新型コロナのパンデミックで止まっていたのだが、昨年末に一部で運航再開、約3年ぶりに海の道がつながった。 中国の武漢発「新型肺炎」が話題になり始めたのは2020年の年明け、横浜港に停泊したクルーズ船の中で感染が広がったのが2月、日政府が韓国中国からの入国禁止を発表したのが3月、欧米などではすでに感染爆発ともいえる状況になっていた。 「ロックダウン」、「都市封鎖」、「県境を越えるな」、「隔離せよ」―― 世界中

    第1話 私もナグネだから|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(1/3)
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    Guro 2023/10/06
  • 本気度のシンクロ|PR誌「ちくま」特別寄稿エッセイ|角田 光代|webちくま

    かつて私は、いろんな年代の、初対面に近い人たちの集う飲み会の席で、生涯一ドラマについてよく訊いていた。二十代なら二十代の、五十代なら五十代の「今まで見たなかでいちばんのドラマ」がある。それ、ついこのあいだじゃないかと思うドラマを挙げる人もいれば、そういえばトレンディドラマってはやったよなと回顧することもあり、なかなかにおもしろかった。 しかしそのような質問を、韓国ドラマについてはできない。あまりに個人的な、個人的というよりもっと深い、個人の核の部分に触れるような質問に思えてしまうのだ。 実際は、韓国ドラマ好きの友人知人と、どのドラマがよかった、これは超おすすめ、○○が好きだったらこれも好きなはず、等々、情報交換はする。そして私は薦められたものは、ジャンルの好き嫌いにかかわらず、とりあえずぜんぶ見る。恋愛ものは苦手だけれど『その年、私たちは』も『トッケビ』も見た。五十話あるんだけどとことわり

    本気度のシンクロ|PR誌「ちくま」特別寄稿エッセイ|角田 光代|webちくま
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    Guro 2023/04/28
  • パンデミックと韓国ドラマ|PR誌「ちくま」特別寄稿エッセイ|角田 光代|webちくま

    もともと韓国映画は好きで、よく見ていたのだけれど、韓国ドラマには興味がなかった。 二〇二〇年に『愛の不時着』を見る気になったのは、周囲で話題になっていたのと、世のなかがパンデミックに突入していたせいだ。たしかにおもしろくて、のめりこんで見た。北朝鮮の暮らしも興味深かったし、彼らの背負う背景のドラマもしっかり作りこんであるのもよかった。 終わってしまうともっと見たくなって、話題になっていたり、勧められたりするドラマをかたっぱしから見ていった。『梨泰院クラス』『サイコだけど大丈夫』『トッケビ』『ミスティ』『秘密の森』……と見続けていって、あれ? と思ったのは『サイコだけど大丈夫』のあたりだった。このドラマは、パーソナリティ障害を抱える絵作家と、自閉スペクトラム症の兄を持つ精神病棟勤務の保護士を中心に描かれる。あれ? と思ったのは、恋愛の扱いかただ。恋愛ドラマに多いのは、主人公たちの過去や背負

    パンデミックと韓国ドラマ|PR誌「ちくま」特別寄稿エッセイ|角田 光代|webちくま
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    Guro 2023/03/02
  • 「丸サ進行」と反復・分割の生 (1)|愛のある批評|西村 紗知|webちくま(1/4)

    人や作品が商品として消費されるとき、そこには抗い、傷つく存在がある。 2021すばるクリティーク賞を受賞し、「新たなフェミニティの批評の萌芽」と評された新鋭・西村紗知が、共犯者としての批評のあり方を明らかにしつつ、愛のある批評を模索する。 第4回は、西村の領である音楽批評。「丸サ進行」を取り入れた楽曲群が体現する、音楽にとっての自由について。 1.はじめに 近頃、音楽を聞くときほど自分の身体が邪魔になることはない。自分の身体が邪魔になるとは、自分自身に蓄積されている古い聴取経験が当てにならないという意味である。最新の邦楽曲を追うことをサボって、ぼーっとしている間にもうすっかり状況は変わってしまった。人間、メディアに対する最適化をサボるともう一度追い付くのはたいへん苦労のかかることだ。筆者はもうテレビを見ないから、テレビに組み込まれている手法や文法が今現在どうなっているのかわからなくなって

    「丸サ進行」と反復・分割の生 (1)|愛のある批評|西村 紗知|webちくま(1/4)
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    Guro 2023/02/10
    (マルサと聞いて出版界/弊社の別の用語を思い出したなど)
  • 「読まない人も行く」地域に愛され図書館界№1に!|ちくまプリマー新書|猪谷 千香|webちくま

    人口4万人にも満たない小さなまち、鹿児島県指宿市には2つの図書館があります。以前はどこの地方にもあるようなさびれた図書館でしたが、地元女性たちで結成されたNPO法人「そらまめの会」によって運営されるようになると、みるみる変化していきました。『小さなまちの奇跡の図書館』より文を一部公開します! 図書館界の憧れ、ライブラリー・オブ・ザ・イヤー 2021年11月26日、指宿市立図書館を運営するNPO法人「そらまめの会」の理事4人は、指宿図書館の一室に集まり、パソコンのモニターを固唾を飲んで見守っていた。 モ二一ターに映し出されていたのは、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー(LoY)」の最終選考会。先進的な図書館活動を行っている機関に対して贈られる賞で、図書館界では毎年、注目を集めるイベントである。中には、この賞をとることを目指す図書館もあるほど、図書館界の憧れでもある。 最終選考会は、LoYの最

    「読まない人も行く」地域に愛され図書館界№1に!|ちくまプリマー新書|猪谷 千香|webちくま
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    Guro 2023/01/11
  • 第3回 投票率の底から|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/3)

    普段ニュースで目にする「世論調査」の使い方を教えるちくま新書『武器としての世論調査』は、2019年6月、第25回参院選を目前に刊行されました。 刊行以降の世論の変化をみていく特集の最終回は、1990年代に崩壊した投票率から、これからの課題を検討します。 年々低下する投票率を立て直すべく、これまで様々な取り組みが行われてきました。投票呼びかけのキャンペーン、模擬投票の実施、若者をターゲットにしたキャラクターやグッズ展開……。確かにそのようなことも行うに越したことはないのでしょう。けれども昨今の投票率の惨状は、そうした取り組みの効果の乏しさを物語っています。 これらの取り組みはどうして効果を発揮してこなかったのでしょうか。それは、なぜ多くの人が選挙に行かなくなっているのかという原因に踏み込まず、投票率という数字ばかりに目を向けてきたからにほかなりません。 投票率の低下は、社会のあり方が背景にあ

    第3回 投票率の底から|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/3)
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    Guro 2022/07/09
  • 第2回 野党共闘はどこへ|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/4)

    普段ニュースで目にする「世論調査」の使い方を教えるちくま新書『武器としての世論調査』は、2019年6月、第25回参院選を目前に刊行されました。 あれから3年、世論は、そして日はどのように変わってきたのでしょうか。この間の野党共闘の成果と課題を見ていきます。 現行の選挙制度では、小泉政権下などのごく一時期を除いて、自民党と公明党が得た票は全国の投票者の半分に届きません。それにもかかわらず与野党の議席に大差がつくのは、自公が協力して候補者を統一している一方で、野党は複数の候補が競合し票の分散がおきてきたためです。そこで2016年以降、野党は共闘を掲げて多くの選挙区で候補者の一化を行ってきました。特に前回(2019年)と前々回(2016年)の参院選では全ての一人区で与野党一騎打ちの構図をつくりあげて成果を出しています。 しかし22日に公示された今回の参院選では、実質的な与野党一騎打ちとなった

    第2回 野党共闘はどこへ|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/4)
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    Guro 2022/07/09
  • 第1回 「今」に至る世論|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/3)

    普段ニュースで目にする「世論調査」の使い方を教えるちくま新書『武器としての世論調査』は、2019年6月、第25回参院選を目前に刊行されました。 あれから3年、世論は、そして日はどのように変わってきたのでしょうか。この間の内閣支持率などを見ていきます。 この3年のあいだに、新型コロナウイルスの流行や2回の首相の交代など、政治をめぐる情勢は大きく変わりました。6月22日に公示される参院選の前に、今に至る世論の動きを振り返ってみましょう。 1.「辞めるべき時に辞める」という切り札 内閣支持率と不支持率について、各社世論調査の平均を図1にまとめました。赤の太線が内閣支持率、青の太線が不支持率で、線が途切れたところでは首相の交代がおきています。さらに図1には、政治的なできごとに加えて新型コロナの感染のピークを第1波から第6波まで示しました。内閣をめぐる最近の世論が、新型コロナの流行と首相の交代を中

    第1回 「今」に至る世論|『武器としての世論調査』リターンズ――2022年参院選編|三春 充希|webちくま(1/3)
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    Guro 2022/07/09
  • 『言葉を失ったあとで』まえがき|単行本|信田 さよ子|webちくま

    上間陽子さんとの対談集『言葉を失ったあとで』の重版ができました。それを記念して、まえがきを公開します。 この一冊が誕生するきっかけは、トークイベント「言葉を失ったあとに」(二〇二〇年一一月二七日、青山ブックセンター店)で上間さんとお話ししたことだった。異例ともいえる速さで申込者が集まったことに驚いたが、オンラインとはいえ初めて顔を合わせたようには思えない充実の一時間半だった。PCの画面越しに、とお嬢さんが悠々と登場する対談も初めてだった。 その後編集者より対談の企画が持ち上がり、沖縄と東京を結んで四回お話しした。最後の一回は、上間さんが池田晶子記念「わたくし、つまりNobody 賞」の受賞のため上京されたので、筑摩書房で行った。終了後、蔵前のイタリアンで、楽しくおしゃべりもした。 書の構成は、実際に話した順番に沿った全六章から成っている。最初のトークからほぼ一年近く経って、こうして一

    『言葉を失ったあとで』まえがき|単行本|信田 さよ子|webちくま
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    Guro 2022/04/22
  • 『女と刀』解説|ちくま文庫|斎藤 真理子|webちくま

    3月の新刊、中村きい子『女と刀』(ちくま文庫)の、斎藤真理子さんによる解説を公開します。 日文学の隠れた名作として、この解説を執筆した斎藤さんや、故鶴見俊輔氏などを魅了してきた作。 その魅力について、強烈な主人公キヲや作者中村きい子について、よく知ることができる解説です。ぜひお読みください。 この小説の主人公、権領司キヲは薩摩郷士の娘である。郷士とは、武士でありながら城下町に住まず、農村で農業を営む下級武士のことだ。特に薩摩藩は他藩に比べて武士が非常に多かったため、全員を城の城下に住ませることはできず、領地を細かく分けて分散配置する「外城制」という仕組みが生まれた。城の外に住む「外城士」(これが後に「郷士」と呼ばれた)は、権威の面では城下に住む「城下士」に遠く及ばないが、平民とは厳しく一線を画さねばならない特殊な階層である。キヲの父はその一人として、生活がいかに貧しくても誇り高くあ

    『女と刀』解説|ちくま文庫|斎藤 真理子|webちくま
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    Guro 2022/04/02
    うわわわわあ