死刑制度存廃をめぐっては、事件や死刑囚とかかわった人たちが、自らの体験に基づきそれぞれの思いを抱いている。犯罪被害者遺族の松村恒夫さんは「死刑囚は死をもって償うべきだ」と主張。これに対し、死刑廃止を求める弁護士の大谷恭子さんは「制度として人の死を選択できることは、認めてはいけない」と訴える。 「死刑という国家による人為的な死に、国民がどう関心を向けていくのかは、この国の大きなテーマ。死刑制度が存置されているために今は、それを国民が望むことが許されているとも言える」。一審での死刑言い渡し後に弁護を担当した、連続射殺事件の永山則夫死刑囚(一九九七年執行)の裁判を通じて、制度として人が人の死を選択できることは、社会のあるべき姿として認めてはいけないと思うようになった。 死刑が秘密裏に執行されている問題を訴える。「死刑囚について表に出る情報が少なく、執行までの生活や、最期に何を考えたのかも知る