学術論文は人類の「知の財産」である。その共有が阻まれるような現状は問題だ。 発見や成果を報告する論文は学術雑誌に掲載され、世界の科学者が読んで研究に役立てる。 ネット時代の到来とともに、学術誌に掲載された論文の多くはオンラインで公開され、どこにいても読める環境が整ってきた。 だが、新たな課題もある。公開に際して研究者が負担する費用が高騰していることだ。 国内の大学図書館で作る団体の推計によると、2020年に日本から公開された論文3万4000本に57億円の費用がかかった。1本当たり十数万円から100万円以上と高額だ。 圧倒的な権威を持つ欧米の学術出版社3~4社が、公開料決定の主導権を握っている。 文部科学省の昨年の調査では、「公開しない」と回答した研究者の55%が「資金がない」ことを理由に挙げた。研究費が少ない若手ほど不利になる。公開控えが起きれば、画期的な成果も宝の持ち腐れになりかねない。
![社説:論文公開費用の高騰 「知」の共有、妨げかねない | 毎日新聞](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/838f133bd9ed6e03d2f25e86526b6d6bee533d3c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn.mainichi.jp%2Fvol1%2F2021%2F01%2F14%2F20210114hpr00m070020000q%2F0c10.jpg%3F1)