意思決定があいまいでは次の危機は乗り切れない。/文・尾身茂(新型コロナウイルス感染症対策分科会会長) 尾見氏⓪政府と専門家の意見が違うのは当たり前政府は6月に検証報告書「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」をまとめました。これに目を通したとき、気になった箇所がありました。 それは〈今回、専門家助言組織のメンバーの個々の発言が政府方針と齟齬があるかのように国民に受け止められる場面や、専門家と行政のどちらの立場としての説明なのか分かりづらい場面が生じるなど、リスク・コミュニケーションのあり方として問題があった〉いうくだりです。 特に気になったのは前段のほうで、政府と専門家の意見に齟齬があることを問題視する受け止め方です。政府と専門家は立場も違えば、見ているものも違います。意見が違うのは当たり前なのに、それが理解されていない。政府と専