迫る波、町をのむ 押し流される住宅・船 女川 津波に巻き込まれた家屋が、車が、樹木が次々と役場庁舎にぶつかる。そのたびに鈍い震動ときしむ音が聞こえる。夢中でシャッターを押す。「死ぬかもしれない」。本気でそう思った。 11日午後3時すぎ。宮城県女川町役場の屋上。真っ二つに割れた民家、横倒しになった漁船、鉄筋のビルまでもがこちらに向かってくる。 町議会定例会を取材していた。突然の地鳴り。議場が大きく揺れた。いったん外に出る。「(津波が)小屋取(浜)を超えたぞ」という声。また役場に駆け込んだ。職員や住民ら約70人がいた。4階のベランダに出たときに白波が現れ、あっという間に4階まで水が迫ってきた。避難ばしごで屋上に行った。 降り始めた横殴りの雪が体を冷やす。役場裏にある無傷の2軒の民家に移動。70人が二手に分かれる。「全部なくなってしまった」。51年前のチリ地震津波を経験した女性がつぶやいた