一昨年、昨年と講師を担当した某ワークショップが、今年度は先方の財政難によって開催されなくなったので、用意していた2、3の教育的な小ネタは来年以降に持ち越しに。 小ネタはたいてい「こういうことをしてはいけない」という注意を与えるものでして、今回ご紹介するのもそれです。つい最近刊行された熊倉浩靖氏『日本語誕生の時代』(雄山閣、2014年)にも見いだされたので、御覧ください(多分、このネタ自体はお蔵入り)。 (216〜217頁) 古代東アジアの諸地域において、漢文の読み書きを学ぶというのは当時すでに成立していた古典の注釈――訓詁学――による解釈を受け入れることで成り立っていたのであって、原則として、漢字の運用は典籍の権威ある注や辞書の記述を離れてなされるものではなかったと考えるべきです。 壬申誓記石の最後にも「詩尚書礼伝倫得」(詩・尚書・礼・伝の倫を得)とありますが、こういった経典は伝統的な注釈
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