宗教的な講や田の水引きの農作業など村人が集まる機会に、独特の節回しで本を読んで聞かせる人びと、ホンヨミ。彼らによって読み伝えられた物語や由緒は、語り継がれ、また、時には書き写されながら、地域社会の共通の知となっていった。 地域社会において、〈本〉は、そして〈読む〉ことと〈書く〉ことはどのような意味を持っていたのか。三陸地方を中心に、ホンヨミに触れてきた人びとへの直接の取材から浮かび上がる民俗社会を描き出す。 はじめに―声なき文字の時代を迎えて 第一部 「本読み」の民俗 第一章 「本読み」の民俗―宮城県気仙沼地方の事例から はじめに―永浦誠喜翁の「物語り的なもの」 「本読み」の研究方法 門付けの「本読み」 家庭の「本読み」 ムラの「本読み」 おわりに 第二章 文字を聞く・文字を語る―「本読み」の民俗誌 音読と共同的読書 漁村の〈本読み〉 山村の〈本読み〉 文字は語りを駆逐したのか 第二部 書